新しいDNA分子の合成は、DNAポリメラーゼが、鋳型となるDNA鎖に相補的な配列でヌクレオチドを結びつけることで始まります。DNAポリメラーゼは、DNA複製の忠実性を確保するために、正しい塩基に対して高い親和性を持っています。さらに、DNAポリメラーゼは複製中に校正を行い、エキソヌクレアーゼ領域を使用して、新生のDNA鎖から間違ったヌクレオチドを切断します
ゲノムDNAは、5’から3’の方向に合成されます。各細胞にはいくつかのDNAポリメラーゼが存在し、DNAの合成と間違いの修正にそれぞれ異なる役割を果たしています。DNAポリメラーゼデルタとイプシロンは、核内DNAを複製する際に校正能力を持っており、新しい鎖に追加された各塩基を読みます。新たに加えられた塩基が間違っていた場合、ポリメラーゼは方向を反転させ(3’から5’へ)、エキソヌクレアーゼ領域を使って間違った塩基を切断します。その後、正しい塩基に置き換えられます。
校正は合成されたばかりのDNAに突然変異が起こるのを防ぐために重要ですが、校正の仕組みが破綻するとどうなるのでしょうか。DNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ領域に変異が生じると、誤ったヌクレオチドを除去する機能が失われます。その結果、突然変異がゲノム全体に急速に蓄積されることになります。このタイプの突然変異は、さまざまな種類のがんに関連しています。
改良型DNAポリメラーゼは、実験室でポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に使用されています。最終製品が完璧であることが重要な場合には忠実度の高いポリメラーゼが使用されますが、エラー・プローンPCRのように、意図的にDNAの断片に変異を生じさせようとする技術もあります。これらの技術では、校正能力が低下したポリメラーゼが使用されます。