水は、植物のライフサイクルにおいて重要な役割を果たしています。しかし、水が不足したり、過剰になったりすると、植物に悪影響を及ぼし、深刻な脅威となります。
通常の環境下では、植物に取り込まれた水は、蒸散と呼ばれる過程で葉などから蒸発していきます。乾燥ストレス時には、蒸散による水分の蒸発量が土壌からの吸収量をはるかに上回り、植物はしおれてしまいます。乾燥ストレスに対する植物の一般的な反応は、アブシジン酸というホルモンを合成して気孔を閉じ、蒸散を抑えることです。また、極度の水不足になると、植物は葉を落とすことで対応します。しかし、この方法では光合成が低下し、植物の成長が妨げられます。
微生物による植物の乾燥ストレスの緩和
乾燥ストレスは、乾燥地や半乾燥地の植物の成長や生産性を制限します。しかし、植物の周辺に存在するある種の微生物は、物理的・化学的なシグナルを放出し、乾燥条件下での植物の防御に関する変化を誘発することがあります。例えば、土壌細菌であるPaenibacillus polymyxは、シロイヌナズナに乾燥耐性を誘導することが報告されています。この細菌の最も顕著な効果は、水ストレス下でのマメ科植物の生育に見られました。マメ科植物は窒素固定のために土壌の根粒菌に依存していますが、根粒菌は乾燥ストレスに非常に敏感で、結果的に窒素固定量が非常に少なくなります。しかし、P. polymyxを混ぜた土壌では、根粒菌による窒素固定量が増加し、マメ科植物の成長が促進されました。
水不足と同様に、水の過剰も植物にとっては悲惨なことです。水が多すぎると、土壌中の空隙が減り、細胞呼吸に必要な酸素が制限されるため、植物は窒息してしまいます。ある種の木本植物は、洪水の状況に対応して、茎の基部で組織の膨らみとして現れる肥大成長をします。この肥大成長は、酸素の下方への拡散を助けるとともに、嫌気性代謝から生成される有毒化合物(二酸化炭素、メタン、エタノール)を排出する可能性があります。その他の洪水ストレスに対する適応反応としては、不定根の形成、気孔細胞と呼ばれる特殊な細胞による根の多孔性の増加、酸素の損失を防ぐための外皮の下層化などが挙げられます。