JoVE Core
Chemistry
Chapter 20: Transition Metals and Coordination Complexes
20.6:
立体異性体
異性体とは、同じ化学式で表される異なる化学種のことです。
遷移金属錯体は、同じ原子が同じ種類の結合でつながっていますが、空間での向きが異なる幾何異性体として存在することがあります。配位子のシス位とトランス位に2つの異なる配位子を持つ配位錯体は、配位異性体を形成します。例えば、八面体の[Co(NH3)4Cl2]+イオンには、2つの異性体が存在する(Figure 1)。 cis配置では、2つの塩化物イオン配位子が互いに隣接しています。もう一方の異性体であるtrans配置では、2つの塩化物配位子が互いに真向かいです。
Figure 1.[Co(H2O)4Cl2]+のcisおよびtrans異性体は、同じ金属イオンに同じ配位子が結合しています。しかし空間的な配置が異なっているため、この2つの化合物は非常に異なる性質を持ちます。
ある物質と幾何学的に異なる原子配置をもつ異性体は、異なる化学物質です。同じ化学式であっても、異なる性質を示します。例えば、[Co(NH3)4Cl2]NO3の2つの異性体は色が異なり、cis型は紫、trans型は緑です。さらに、これらの異性体は、双極子モーメント、溶解度、反応性も異なります。空間上の配置が分子特性にどのように影響するかの例として、2つの[Co(NH3)4Cl2]NO3異性体の極性を考えたいです。分子やイオンの極性は、結合双極子(結合している原子の電気陰性度の違いによるもの)と空間内の配置によって決まります。ある異性体では、cisの塩化物イオン配位子は、分子の一方の側に他方の側よりも多くの電子密度を生じさせ、結果として極性が生じます。trans異性体では、各配位子が同一の配位子の真向かいにあるため、結合双極子が相殺され、分子は無極性となります。
もう1つの重要な異性体は、光学異性体(エナンチオマー)です。これは、2つの化学種がお互いの鏡像であり、すべての原子を重ね合わせることが出来ないような関係にある異性体として定義されます。典型的な例は一対の手であり、右手と左手が互いに鏡像でありながら重ね合わせることができません。生物は、ある特定の光学異性体を持ち、他の光学異性体を持たないことが多いため、光学異性体は有機化学や生化学において非常に重要です。幾何異性体とは異なり、光学異性体のペアはほぼ同じ性質(沸点、極性、溶解度など)を持ちます。光学異性体の違いは、偏光への影響や、他の光学異性体との反応の仕方だけです。配位錯体の場合、[M(en)3]n+ (ここで、Mn+は鉄(III)やコバルト(II)などの中心金属イオン)などの多くの配位化合物は、Figure 2に示すように光学異性体を形成します。この2つの異性体は、他の光学異性体との反応が異なります。例えば、DNAのらせんは光学異性体であり、自然界に存在する形(右巻きのDNA)は、[M(en)3]n+の一方の異性体のみと結合し、もう一方の異性体とは結合しません。
Figure 2. 錯体[M(en)3]n+(Mn+ = 金属イオン、en = エチレンジアミン)は、重ね合わせ不可能な鏡像を持ちます。
[Co(en)2Cl2]+イオンは、幾何異性(cis/trans)を示し、そのcis異性体は一対の光学異性体として存在します。(Figure 3)
Figure 3.[Co(en)2Cl2]+には、3つの異性体が存在します。塩素が180°の角度で配置されてできるtrans異性体は、cis異性体とは全く異なる性質を持っています。cis異性体の鏡像は一対の光学異性体を形成し、他のエナンチオマーと反応する場合を除いて同一の性質を示します。
上記の文章は以下から引用しました。Openstax, Chemistry 2e, Chapter 19.2 Coordination Chemistry of Transition Metals.
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