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Basic Methods in Cellular and Molecular Biology

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PCR法: ポリメラーゼ連鎖反応

Summary

Overview

ポリメラーゼ連鎖反応、又はPCRは、温度変化; 一定の時間間隔で温度を変化させる、を利用しDNAを増幅する手法です。PCR法では、耐熱性DNAポリメラーゼを使用し、DNAの構成単位であるデオキシヌクレオチド三リン酸又はdNTPsを結合させ大量のDNAコピーを作り出すことができます。PCRには3つのステップ: 熱変性、アニーリング、伸長反応、があります。熱変性はPCRサイクルの最初のステップであり、塩基対間の水素結合を切断し二本鎖DNAを一本鎖DNAに変性する工程です。次のアニーリングでは、温度を低下させ、オリゴヌクレオチドプライマーを鋳型DNAに結合させます。最後の伸長反応で、DNAポリメラーゼが新たな二本鎖DNAを合成します。

このビデオでは、PCRの各工程を紹介しています。PCRの基本原理を一般的なPCR反応液の調整法などの工程と共に説明しています。また、PCR反応に必要な要素となるプライマーの設計方法やPCRを成功に導くための有益なヒントも紹介しています。

Procedure

ポリメラーゼ連鎖反応、又はPCRは、DNA断片を増幅するための手法であり広く利用されています。PCR法は、加熱と冷却の温度変化を利用し、熱変性、アニーリング、伸長反応の3つのステップを繰り返し反応させます。

温度変化による反応は、PCR試薬をサーモサイクラーという装置にセットすれば開始できます。この装置にはあらかじめ反応のための至適温度をプログラムできます。

PCRサイクルの最初のステップは変性です。20から30秒、95℃で加熱することにより熱変性させます。DNAの融解温度ではDNAの半数が二重らせん、半数が一本鎖ランダムコイルの状態で存在します。変性温度は融解温度よりもかなり高い温度で、相補的塩基対間の全ての水素結合が切断され、一本鎖DNAに解離する温度です。DNAはセンス鎖とアンチセンス鎖がペアとなり構成されています。センス鎖、又はコード鎖の配列は、メッセンジャーRNAの配列と同一で、最終的にタンパク質の合成に重要となります。

センス鎖は左から右に、5’リン酸基から始まり、3’水酸基で終わります。

アンチセンス鎖は、相補鎖とも呼ばれ、3’水酸基から始まり、5’リン酸基で終わります。

2番目のステップは、アニーリングです。これはプライマーと呼ばれる短いDNA断片とセンス鎖もしくはアンチセンス鎖とを水素結合により特異的に結合させる工程です。アンチセンス鎖に結合する、センス鎖と同じ配列を持つプライマーをフォワード又はセンスプライマーと呼びます。また、センス鎖に結合する、センス鎖と逆の相補的な配列を持つプライマーをリバース又はアンチセンスプライマーと呼びます。アニーリング温度はプライマーの長さに依存しますが、通常、使用する2種のプライマーのうち低い方の融解温度よりも3℃から5℃低く設定します。アニーリングの至適条件は50から65℃、20から40秒です。

プライマーがDNAに結合すると、DNA複製のための酵素であるポリメラーゼがプライマーの3’水酸基末端に結合し反応の準備が整います。

次のステップは伸長反応です。この反応はポリメラーゼ活性の至適温度である72℃で生じます。ポリメラーゼにより、プライマーの5’から3’方向にフリーのヌクレオチド3リン酸、dNTPが結合していき、二本鎖DNAが合成されます。

伸長反応終了後、2サイクル目に入ります。次のサイクルでは、プライマーは前回の伸長反応により生じた一本鎖DNAに結合します。増幅しようとする短いDNAのことをアンプリコンと呼びます。アンプコンは、ポリメラーゼがフォワードプイマーを伸長することで出来上がります。このフォワードプライマーはリバースプライマーにより増幅された一本鎖に結合したものです。同様にリバースプライマーの伸長によっても合成されます。

アンプリコンは一度合成されると、サイクルを繰り返す毎に、指数関数的に増幅します。目的に応じて、20から40サイクル繰り返します。

長鎖のアンプリコンの場合、最後の伸長反応ステップは、72℃で5分から15分に設定し確実に二本鎖DNAが形成されるようにします。

装置から取り出した後もDNAを安定させるため、一般に、反応終了後4℃になるようサーモサイクラーを設定しておきます。

PCRには、鍵となる試薬がいくつかあります。まずは、鋳型DNAです。これは増幅対象となるDNAサンプルです。そして、プライマーです。これはDNAの短い断片、オリゴヌクレオチドであり、これにポリメラーゼが反応します。

使用するプライマーを選ぶ際には重要となる条件がいくつかあります。

まずは、増幅対象となる配列、鋳型DNAの5’と3’領域に相補的であることです。2番目に、長さは15から30塩基対にし、グアニンとシトシンの含量は50%程度にします。

3番目に、どちらのプライマーの融解温度も50℃より高く、また互いの差が1、2℃であるものを選びます。これにより効率的に結合できます。4番目に、プライマーが互いに相補的でなく、プライマーダイマーを形成しないことです。

そして5番目に、二次構造を含まないことです。プライマー自身でのアニーリングを防ぎます。

プライマーと鋳型DNAに加え、DNAポリメラーゼもPCRの鍵となります。最も頻繁に利用される酵素はTaqポリメラーゼです。これは温泉に生息するThermus aquaticusという細菌から分離した耐熱性酵素です。Taqポリメラーゼは90℃以上の温度でも失活しません。

伸長鎖の塩基対として取り込まれていくデオキシヌクレオチド三リン酸、dNTPも反応にとても重要になります。pHを保つためのバッファー溶液にはマンガン、マグネシウム、カリウムなどのイオンが含まれており、反応用の混合物として重要であり、さらにポリメラーゼ酵素活性の補因子となります。PCRの溶媒には、反応を妨害するようなイオンが除去されたPCRグレードの水を使用して下さい。

PCR法を始める前に、作業領域を清潔にし、コンタミネーションを予防します。また、グローブを常に着用して下さい。

反応に必要となる試薬類は最初に書き出しておくことをお勧めします。サンプルやコントロールの試薬の量と濃度は表にまとめておきます。

一般的な反応液の容量は以下の通りです。10X反応バッファー5μL、25mM塩化マグネシウム4μL、10mM dNTP1μL、50ng/μLのフォワードプライマー及びリバースプライマー各2μL、5U/μLのTaqポリメラーゼ0.3μL。鋳型となるDNAは十分量加えるようにします。ここでは反応液に100ng 含まれるようにします。総容量が50μLになるように調製します。PCRグレードの水の量を全体量がぴったりと50μLになるよう計算しておきます。

反応液の調製は氷の上で行っていきます。

次に、PCR用チューブに試薬類を加えます。まず水を加え、それから鋳型、プライマー、バッファー、塩化マグネシウム、dNTP、Taqポリメラーゼを加え、十分に混和します。

反応液を調製したら、サーモサイクラーにセットし、PCRプログラムを開始します。簡単に説明すると、この装置は以下のものから構成されています。まずサーモブロック、PCR用チューブ又はプレートを挿入し、精密に温度変化をコントロールできます。ヒーティッドリッド、サンプルが濃縮されるのを防ぎ、ロスを減らします。またプログラムされたPCRの温度と時間を表示するインターフェイスが備わっています。プログラムは反応液調製前にセットしておくようにしましょう。

サーモサイクラーが反応を完了したら、反応液を取り出し、PCR産物をゲル電気泳動を利用して確認します。PCRが成功していれば、アンプリコンが適切な塩基対のサイズとして現れるはずです。

次はPCRを行う際に役立つヒントを紹介します。

多数の異なる鋳型DNAから同じPCR産物を増幅したいときには、反応液の条件をセットアップする必要があります。そこでマスターミックスを調製しておくと便利です。PCR用マスターミックスとは、様々なサンプル間でシェアできるよう試薬類を混合しまとめて調製したものです。そして反応用チューブに分注しておきます。

PCRの一番最初の変性ステップは、95℃、1から9分に設定し開始します。この工程は、最初の増幅サイクルですべての鋳型を一本鎖に解離させるためのものです。

コンタミネーションの危険性がある場合にはPCRキャビネットを使用します。反応液のコンタミネーション確認のために、ネガティブコントロールの使用が役立ちます。これには鋳型DNAが含まれておらず、ゲルにも検出されません。

PCRは、温度、塩化マグネシウム、濃度、プライマーを調整することにより最適化できます。

PCRの至適条件を各自検討しましょう。

そして常にポジティブコントロールを使用し、PCR産物を確認するようにします。

様々な目的のための様々なPCRのアプリケーションがあります。

一つ目は、Hot Start PCR法です。最初の変性ステップまで、ポリメラーゼの活性を抑制し、サイクル開始前の非特異的な増幅を防止します。

また、PCRは同時に複数のDNA配列を増幅することもできます。一つのPCR反応系に複数のプライマーを使用する手法をマルチプレックスPCRと呼びます。

PCRと蛍光オリゴヌクレオチドプローブを組み合わせることで、遺伝子発現のレベルやmRNAが生産した遺伝子や遺伝子群の量を相対的又は絶対レベルで測定できるツールとなります。この手法は定量的PCR(qPCR) と呼ばれます。

他にもPCR法は、生命体が持つ特定のDNA配列の存在を確認するためにも利用されます。 この手法は、ジェノタイピングと呼ばれます。例えば、魚のサンプル中の種特異的なDNA配列を検出することでサンプルの信憑性を検証することができます。さら法医学的分析にもジェノタイピングが利用されています。犯行現場に残されたDNAが被疑者のものと一致するか検証することができます。

ここまでJoVE、PCR法入門編をご覧いただきました。このビデオでは、PCRの基本概念、またその作用、そしてPCR反応液の調整法、DNA増幅のメカニズム、さらにこの大変有用なツールの様々なアプリケーションを紹介しました。ご覧いただきありがとうございました。

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