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Basic Methods in Cellular and Molecular Biology

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DNAのライゲーション反応

Summary

Overview

分子生物学において、ライゲーションとは、2つのDNA断片をリン酸ジエステル結合により連結することと定義されています。リガーゼとはライゲーション反応を触媒する酵素であり、細胞内でDNA複製中に生成される一本鎖および二本鎖切断の修復を行います。実験では、DNAリガーセを用いた分子クローニングが行われており、挿入するDNA断片とベクターを連結し、宿主生物内で標的断片を複製するキャリヤDNA分子を作製します。

このビデオでは、DNAライゲーションについて紹介しています。まずはライゲーションの基本原理とライゲーション反応の一般的なセットアップ方法を段階的に説明し、次にライゲーションの重要な鍵となる事項: 付着(粘着)末端の長さの反応温度への影響、セルフライゲーション防止のための挿入するDNA断片(インサート)とベクターの最適な比率、について説明しています。さらに、クレノウ断片やシュリンプ由来アルカリホスファターゼ(SAP)などライゲーション効率を上げるための分子ツール、またプロキシミティライゲーションや塩基配列決定(シークエンシング)のための断片へのリンカーの挿入などの応用例も紹介しています。

Procedure

ライゲーションとは連結することを意味し、生物学では二つの生体分子が共有結合により連結する酵素反応のことを示します。このビデオでは分子生物学研究におけるDNAライゲーションの利用法を紹介していきます。

DNAリガーゼは分子クローニングに日常的に利用されます。これはエンドヌクレアーゼ分解したDNA断片や挿入断片とプラスミドなどのベクターを連結させる手法であり、それを宿主細胞に導入し、複製できます。

エンドヌクレアーゼ分解には、制限エンドヌクレアーゼつまり制限酵素の使用も含まれ、特定のDNAに切れ目(ニック)を作ります。

この切れ目は3’および5’に突出部のある付着末端(粘着末端)を形成する一本鎖切断と類似しています。一方で突出のない二本鎖切断を平滑末端と呼びます。付着末端のライゲーションは、相補的な突出塩基対が反応を安定させるため効率的です。反対に平滑末端は相補的な塩基対がないため、ライゲーションの効率は悪く、酵素による連結はより難しくなります。付着末端と平滑末端を普通の状態で結合させることはできません。

しかしながら、DNAポリメラーゼ1からサチライシン処理により得られるクレノウ断片は付着末端を平滑末端に変えることができます。クレノウは3’から5’方向のエキソヌクレアーゼ活性を持っています。 これにより相補鎖の3’突出を除去し、5’突出を埋めることができます。

遺伝子をプラスミドへ組み込むことが目的であり、ライゲーション反応時にありがちなセルフライゲーションと呼ばれるベクターDNA自身の再連結は望ましくありません。そこで酵素処理後のDNAをアルカリホスファターゼ処理することでどちらの5’リン酸基も除去でき、セルフライゲーションを阻止できます。

先にも述べたように、ライゲーション開始前にまずベクターやインサートDNAsをエンドヌクレアーゼで酵素処理します。分解されたベクターとインサートをゲルを用いて精製したら、DNA濃度を分光光度計で測定し、精製したベクターとインサートの濃度を定量します。

この濃度から、1 µl中のベクターとインサートの分子数をDNA塩基対と各断片の塩基対の分子量に基づいて決定します。 計算した分子数に基づき、インサートとベクターを3対1の比率で計算し、反応に必要な量を決定します。インサートDNA3、ベクター1の比率は合理的です。この比率により、ベクター自身がライゲーションする確率に対しインサートがベクターに連結する確率を高めることができます。

反応に使用するベクターとインサートDNAの量を決定したら、氷の上でライゲーション反応を進めていきます。反応成分を以下の順でマイクロチューブに加えます。最終量が10 µlになるよう滅菌水、この場合は4 µlを使用します。次に1 µl の10Xバッファー、1 µlの10mM ATP、1 µlのベクター、3 µlのインサートDNA、最後に1 µlのDNAリガーゼを加えます。反応液は完全に混合し、遠心後至適温度でインキュベートします。

付着末端と平滑末端どちらのラーゲーション反応も温度と時間に依存します。例えば、付着末端の突出6塩基対とのライゲーションは室温で1時間程度で完了します。この条件で相補となる末端の連結が安定化するためです。短い突出末端あるいは平滑末端の場合は14°Cから20℃で一晩反応させます。

ライゲーション反応のセットアップ方法を学んだところで、次はこの手法の応用例を見ていきましょう。

ライゲーションによりPCR増幅断片をプラスミドに直接挿入することができます。ここでは凍らせたマウスの脳からサンプルを採取しゲノムDNAを単離した後、亜硫酸水素塩PCR分析を行っています。これはPCRによるメチル化DNAの検出法です。その後PCR産物を直接プラスミドに挿入し、脳の特定領域でメチル化された遺伝子のライブラリを作製できます。

PCRプライマーの結合部位をもつオリゴヌクレオチドリンカーをライゲーションで挿入し、DNA断片の精製ができます。腫瘍サンプルの研究では、この方法を使ってゲノムDNAの配列を決定し、原因となる突然変異の特定が試みられています。

ここでは、ホルムアルデヒド固定した細胞から単離したDNAを使ってライゲーションを行っています。制限酵素処理に続いて、ビオチン存在下クレノウによりライゲーションしたDNAを取り出します。その後このDNAをPCRにより増幅し、その産物の配列からあらゆる大きさのクロマチン相互作用を確認出来ます。

ここまでDNAリガーゼやライゲーションのセットアップ方法など様々な原理、また分子生物学実験で起こりうる問題とその対処法、そして最後にライゲーションの応用例を紹介しました。ご覧いただきありがとうございました。

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