Caenorhabditis elegans 入門

Biology I

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Summary

Caenorhabditis elegans は、土壌に生息する非常に小さい線虫で、1970年代初頭から多用されてきたモデル生物です。決まったボディプランをもち、遺伝子操作がしやすく、低価格でメンテナンスできるため、当初は発生生物学のモデル生物として登場しました。それ以降、その成長が早いという利点が生かされ、運動機能から神経回路の研究まで様々な研究に利用されるようになりました。

このビデオでは、C. elegans基礎生物学の概要、過去の画期的な研究成果を簡潔に紹介し、最後にモデル生物としてC. elegansを利用した素晴らしい研究をご覧いただけます。

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JoVE Science Education Database. モデル生物I: 出芽酵母、ショウジョウバエ、C. elegans. Caenorhabditis elegans 入門. JoVE, Cambridge, MA, (2019).

シノラブダイティス・エレガンスは線虫とも呼ばれ、細胞活動制御の遺伝子研究に大変革をもたらしました。 線虫の遺伝子は単純で、透明な体をもち、簡単に培養できるため、胚発生、神経機能、寿命、老化、ヒト疾患の研究のために理想的なシステムです。

まず、モデル生物としてのC.エレガンスを知っていきましょう。 シノラブダイティス・エレガンスは、動物界の線形動物門に属します。 C.エレガンスは体長約1mmの多細胞生物です。 伸長する円筒形の体で、体節も付属器も持ちません。 線虫は一生涯透明の体で過ごし、雌雄同体と雄が存在します。 雌雄同体は自家受精も雄との交配も可能です。(F)

線形動物は、一定基準の湿気と酸素を含む土壌に生育します。

研究室では、大腸菌を生やしたアガロースを含有するペトリディッシュで培養します。

線虫の寿命は約14日です。 L1からL4までの4つの幼虫期で、卵の状態から産卵するようになるまで成長します。 線虫の発生は、温度に影響されます。 研究室では、15℃、20℃又は25℃で培養します。

Cエレガンスの基本について学んだところで、次は、有益なモデル生物となる利点について考えてみましょう。 まず、比較的安価であり、土でも液体培地でも培養できます。

2番目に、生涯透明の体をもつため、全組織が光学顕微鏡で観察しやすいです。 よって、個別細胞の細胞系譜を簡単に確認でき、線虫の発生研究に特に役立ちます。 体が透明なため生きた状態でGFPなどの蛍光レポーターを確認できます。

3番目は、Cエレガンスの生殖能力です。 1匹の雌雄同体は、自家受精により約300個の卵を産みます。 よって大量の線虫を獲得できます。 また、線虫は20℃の条件下3.5日で生殖可能になります。

4番目に、遺伝子操作がしやすいです。 突然変異試験により、遺伝子機能の洞察ができ、化学処理や紫外線照射により、遺伝子変異を線虫に誘導できます。 線虫を使ったハイスループット遺伝子スクリーニングは、96ウェルのプレートで簡単に行えます。 これにより、多数の遺伝子を同時にスクリーニングし、特異的な生物学的現象や行動との関与を研究できます。 また、Cエレガンス遺伝子センター、CGCではミュータントを多数保持しており、研究者はわずかな手数料で入手可能です。

5番目に、Cエレガンスが、全ゲノム配列が解読された最初の多細胞生物であることです。 全配列と詳細な染色体地図により、遺伝子解析が速く簡単にできます。 配列解析により、ヒトと線虫とで多くの遺伝子が保存されていることが分かります。

最後に、これらの利点に加え、線虫研究コミュニティは発達しており、オンラインでたくさんの研究に関する有益な情報を得ることができます。

Cエレガンスは、魅力的なモデル生物としての要素を全て備えており、多くの大発見がその研究から生まれました。 そのいくつかを見ていきましょう。 1963年、 Sydney BrennerはCエレガンスをモデル生物として提唱し、遺伝子機能の研究行いました。 1974年、彼は、 むっちりした形や、非協調性運動、変形などの見て分かる表現型の遺伝学的スクリーニングの結果を発表しました。 1976年、 Brennerの共同研究者John Sulstonが、Cエレガンスの細胞系譜を発表しました。 彼は 細胞系をすべて追跡し、最初の5回の細胞分裂で、6種類の創始細胞が形成されることを発見しました。(F) 1986年、 Robert Horvitzは「致死遺伝子」発見の先駆けとなる成果を発表しました。(G) 細胞が分裂、分化するとき、ある細胞は致死遺伝子の活性により排除されます。(G’) 彼はプログラム細胞死、つまりアポトーシスについて研究し、哺乳類やガン、神経変性疾患の発生事象の理解に大きなインパクトを与えました。(H) 2002年、 Sydney Brenner、John Sulston、Robert Horvitzの3人は、Cエレガンスに関する素晴らしい研究成果に対し、ノーベル生理学・医学賞を共同受賞しました。(I)

2006年、 Andrew Fire とCraig Mellonoの二人は、RNA干渉に関する革新的な研究成果に対しノーベル生理学・医学賞を共同受賞しました。 RNAiとは、特異的なmRNAの分解により遺伝子サイレンシングを引き起こすプロセスです。 現在RNAiは遺伝子治療の手法として期待されています。

2008年、 Martin Chalfie は、Cエレガンスに蛍光タンパク質、GFPを発現させ、蛍光標識としての使用を実証した成果に対しノーベル化学賞を受賞しました。 それ以来、GFP発現は、すべての主要なモデル生物で用いられています。

モデル生物としてのCエレガンスは、科学的問題を解く重要な鍵となります。

例えば、神経生物学の研究にとっても最適なモデルです。 線虫自体は脳をもちませんが、雌雄同体成虫の体細胞959個の約3分の1にあたる302個の神経からなる高機能の神経系があります。 線虫は、エサの存在、人口密度、化学誘因物質のような環境信号に反応します。 遺伝子検査に加え、レーザー光による選択的神経切断技術や電気生理学により、多細胞生物の神経機能や伝達について知ることができます。 実際に、Cエレガンスの全神経回路ネットワークはすでに解明されています。

線虫は老化研究の理想モデルでもあります。 その短い生活環により、長寿に関わる遺伝子のスクリーニングを可能にします。 それら多くの遺伝子はヒトとの間で保存されていますが、人間の寿命への影響はまだ分かっていません。

さらに、線虫によるヒト疾患の研究も進んでいます。 蛍光レポーターを用い、線虫内でαシヌクレインのようなミスフォールドタンパク質の凝集を再現することができます。 この凝集は、神経変性、結果として運動障害を引き起こします。 線虫の遺伝子検査は、パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患の神経脱落を防ぐ遺伝子の発見にもつながります。

今回のJoveシノラブダイティス・エレガンス入門編では、Cエレガンスの特徴、有益な生物モデルとなる理由について学びました。 単純な遺伝子、小さな神経系をもつこのちっぽけな線虫が、私たち人間の発生、行動、老化、疾患などのたくさんのメカニズムの解明に重要な役割を果たしています。 ご覧いただきありがとうございました。

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