神経解剖学入門

Neuroscience

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Summary

神経解剖学は神経系の構造とそれに関連する機能について研究を行う学問です。神経解剖学の焦点の一つは、中枢および末梢神経系のマクロ的な構造を明らかにすることです。例として脳表面の皮質の脳溝の研究などが挙げられます。もう一つの大きな焦点は、神経系を代表する2細胞であるニューロンとグリア細胞の関連性の研究です。

このビデオでは、最初に哲学者が「こころは心臓ではなく脳に宿っている」と提唱した紀元前4世紀まで遡り、そこからの神経解剖学研究の歴史を学ぶことができます。次に、細胞構築の役割やニューロンとグリア細胞の配置が脳機能に与える影響、また経験や疾患に基づきどのように神経解剖学的変化が引き起こされるのかなどといった鍵となる研究内容について解説し、組織学や磁気共鳴画像法(MRI)などのそれらの疑問を解決するための研究ツールを紹介しています。最後に、今日の神経解剖学研究例をご覧いただけます。

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JoVE Science Education Database. 神経科学のエッセンシャル. 神経解剖学入門. JoVE, Cambridge, MA, (2019).

神経解剖学者たちによって、私達の行動を司る複雑なシステムをナビゲートするためのマップを描く試みが成されています。顕微鏡を利用し、情報発信細胞として知られる神経細胞とメンテナンス細胞として知られるグリア細胞の相互作用やそれらの細胞を支える細胞マトリックスの研究が行われています。神経解剖学とは広義では脳の構造と神経回路について研究する学問になります。

このビデオでは、神経解剖学研究の歴史的背景や主な研究内容、そしてそれらを研究するためのツールについて実験例を紹介しながら解説していきます。

早速、神経解剖学の歴史を見ていきましょう。神経解剖学研究のルーツは紀元前4世紀、Hippocratesが「心の座は脳にある」と提唱した時代まで遡ります。

そのまま時は流れ15世紀の終わりに Pope Sixtus 4世により人体解剖が許可されて初めて、神経解剖学研究は活気づいてきます。1543年に 出版されたAndreas Vesaliusの「人体の解剖書」には脳解剖に対する詳細な説明が記載されました。

その後1664年 Thomas Willisにより 出版された「脳解剖学」では、新たな神経構造について述べられその機能についての仮説が立てられました。Willisの研究は、現代神経解剖学の基盤となっています。

16世紀末に顕微鏡が発明され神経解剖学研究は新たな局面を迎えます。この画期的な技術に続いて1873年、Camillo Golgiは顕微鏡で単一ニューロンを可視化するための染色法を生み出しました。

これら革新的技術により、1888年 Santiago Ramon y Cajalは、脳の基本単位はニューロンであるというニューロン説を提唱するに至ります。

そして、1909年Korbinian Brodmannにより脳地図が発表されました。大脳皮質が52の領野に区分され通称「 Brodmannの脳地図」と呼ばれるもので、大脳新皮質の細胞構築学を元に分類されています。

そして1957年、Wilder Penfield、Theodore Rasmussenにより皮質のホムンクルスが作成されました。Brodmannの脳地図よりもさらに詳細であり、運動及び感覚機能を支配する領域が示されています。

顕微鏡及び肉眼による神経系構造の素晴らしい研究成果により、今日の研究ではそれらの脳構造がどのような役割を持つのかに焦点が当てられています。

特に、細胞構築やニューロンとグリア細胞の配置ついての研究が進められています。

脳内のある神経細胞集団を研究するには、その神経細胞のサブタイプが他の脳領域とどのように連絡を取り合うのか明らかにすることが一つの鍵となります。

細胞構築がダイナミックに連動しているのであれば、気になってくるのが、どのように、そしてなぜ神経構造の変化が引き起こされるのかということです。

学習と記憶には「神経の可塑性」又は神経回路の変化が関連しており、ニューロン間のつながりが変化することに基づいています。トゲ状の樹状突起スパインは、神経活動に依存して、サイズや形、その数をダイナミックに変えることができます。

また、神経系構造の理解は、その機能不全を解明するためにも非常に重要になります。

消耗性の神経変性疾患には、例えばパーキンソン病に見られるドパミン作動性ニューロンの変性など特有の神経解剖学的変化が関連しています。

鍵となる研究内容を理解したところで、それらを解明するためのツールを紹介していきます。

まずは、細胞構築学研究に必須となる組織学つまり染色した組織切片を解析するテクニックです。神経組織学者は多数の染色法を使い分け、神経系の特異的な構造を可視化します。

組織化学は化学成分の検出を試みる組織学の一分野です。特に有益な組織化学の活用例の一つはトレーサーの検出です。トレーサーはニューロンに取り込まれ神経系のつながりを可視化するために利用されます。

先にも述べたように、顕微鏡の出現は神経解剖学研究に革命をもたらしました。光学顕微鏡により、染色した神経組織を元の大きさの1000倍近くにまで拡大することができるようになり、細胞構築の観察が可能となりました。

そして蛍光顕微鏡により、組織切片又は培養組織中で免疫標識したタンパク質をイメージングできるようになり、単一ニューロン内の2つのタンパク質が近いところに存在しているのか否かの確認が可能になりました。

共焦点イメージング法は蛍光顕微鏡法を発展させた解析法であり、神経組織の光学切片像を取得し3次元に構築することが可能となるため、より詳細なニューロンの形態を知ることができます。また2光子イメージング法は、組織の深部を観察できる解析法で、生きた動物の活動中の脳のイメージングに用いられます。

しかしながら、光子は電子のようには吸収されないため、ナノメートル以下の分解能での神経構造の解析には電子顕微鏡が用いられます。また、特に詳細なシナプス像を取得したいときには、透過型電子顕微鏡法を利用します。さらに、電子顕微鏡で観察した連続切片画像を収集し、ニューロンの内部を3次元に復元するトモグラフィーと呼ばれる技術も存在します。

神経構造の経時的変化を観察できる神経イメージング法は極めて有用なツールとなります。磁気共鳴画像法つまりMRIは、ヒトの脳の診断に非常によく利用されています。1mm単位の分解能で脳全体の画像を取得できるテクニックです。

またMRIトラクトグラフィーを使って脳の白質を調べることができます。軸索束を観察し脳領域間または内部のつながりについて明らかにできます。

神経構造と病態との関連性を調べるために、外科的手法を用いて動物モデルを作成することがあります。定位脳手術を実施する際、3次元座標系と詳細な解剖学アトラスを使用することで、目的の領域を物理的に取り扱うことが可能となります。

固定装置と解剖学の知識を用いることで、電気的刺激による薬剤導入の実施や標的となる脳領域を損傷させることができます。

ここからは、実際の研究例を見ていきましょう。

薄くスライスし保存しておいた脳切片を解析することで詳細な脳構造の情報を得ることができます。霊長類の脳切片を使用し、脳全体で3種類のタンパク質を染色により識別しています。染色した切片を高倍率で観察することで、細胞レベルでの構造観察が可能となります。

経験により神経構造が細胞レベルで改変されることがあります。

触刺激を与えながら若齢ラットを飼育し大人へと成長したら脳サンプルを収集し染色して細胞形態を観察します。取得画像を解析すると樹状突起の形と数が変化しており、ニューロン同士のつながりが変化したことが示唆されます。

神経解剖学は、神経および精神疾患の診断と治療に役立っており、臨床にとって不可欠です。例えば、細胞構築の変化は特定の病態に密接に関わってきます。神経構造のイメージングは頻繁に機能イメージングと併用され、正常時と病態での脳領域の活動が比較されます。例えば、脳震盪を起こした患者さんの神経活動パタンには変化が見られます。これは外傷からの回復に関連すると考えられています。

ここまでJoVE神経解剖学入門編をご覧いただきました。このビデオでは、神経解剖学研究の歴史と鍵となる研究内容を紹介しました。

さらに、顕微鏡レベルからマクロのレベルに至る研究例やこれらテクニックのアプリケーション例を紹介しました。

ご覧いただきありがとうございました。

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