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神経組織の染色

Summary

Overview

組織や臓器の細胞構造や分子のレイアウトを調べるために、組織染色と呼ばれるテクニックが利用されます。化学固定液で保存された目的組織から薄い切片を切り出し、その後様々な染色法を用いてサンプルに濃淡をつけることができます。神経解剖学研究では、組織学的方法を用いて神経系組織を可視化し研究が行われています。

このビデオでは、神経組織の染色法をトピックとしています。神経細胞体を特異的に染色できるニッスル染色やミエリンを有する軸索を選択的に標識できるルクソール・ファスト・ブルー染色などの一般的な染色法について解説しています。また、抗体と細胞分子との特異的相互作用を利用する免疫組織学的テクニックも紹介しています。その後、組織の固定、包埋、セクショニング(薄切)、再水和といった脳サンプル準備法の基本工程と免疫組織染色およびニッスル染色の染色工程について解説しています。そして最後に、今日の研究へのこのテクニックのアプリケーション例をご覧いただけます。

Procedure

脳組織切片は脳の構造と機能を明らかにするための貴重な実験材料になります。しかしそのままの状態では何の情報も得ることができません。そこで脳切片を染色することで、細胞や構造、組織の分子成分をはっきりと可視化できるようになります。

一般に染色には共通の方法が用いられますが、アプローチ次第で異なる組織や細胞を標的とすることができます。このビデオでは、脳の組織学の基本原理と一般的な染色方法、そして今日の神経科学研究への応用例を紹介していきます。

神経の染色を行う前に、まずはその目的を知っておきましょう。

組織染色を行うことでコントラストをつけることができ通常は見ることのできない特徴を観察できるようになります。神経系灰白質を形成する神経細胞体を観察するための複数の染色方法が存在します。例えば、ニッスル染色の染色剤は核酸に付着し細胞体を紫色に染めるため神経組織を観察できるようになります。

また、白質の観察には脂肪酸から成るミエリンを染色できるルクソール・ファスト・ブルーが用いられます。

他にも免疫組織化学染色により、特定の分子に色をつけることができます。このテクニックは特異的抗体と分子標的となる抗原を利用します。酵素又は蛍光物質と融合した抗体を使用することで、酵素反応および蛍光発光により結合した部位の観察が可能となります。

染色方法の概要を知ったところで、最適に可視化するために必須となる染色前の工程を見ていきましょう。

組織構造を維持するために、まずは灌流を行い脳から血液を取り除きます。動物の血管を介して化学固定液を脳に送り込むことができます。解剖後、脳を固定液に完全に浸したら保存工程の完了です。

次にサンプルを同じような特性をもつ溶剤、例えばパラフィンワックスで包埋します。包埋後はミクロトームという装置を使って脳切片を作製します。そしてその切片をスライドにのせ乾燥させます。

ほとんどの染色剤は水性であるため、染色前に組織を脱水し再水和させる必要があります。スライドをキシレン中で洗浄しワックスを溶解させてから、段階希釈したエタノールを用いて再水和させていきます。この作業は適切な個人用保護具を身に付け、ドラフト内で行ってください。

脳組織の準備ができたら、染色工程に入っていきましょう。

第1ステップはブロッキングと呼ばれ、非特異的な抗体の結合により生じるバックグラウンドを下げるための工程です。切片を血清に浸すことで、非特異的結合部位を覆い隠します。そして30分から一晩待ってから、一次抗体を加えインキュベーションし抗体を標的部位に結合させます。

抗体を界面活性剤が入ったブロッキング溶液で希釈することで、細胞膜の透過性が上がり抗体が細胞質に入りやすくなります。

一晩インキュベーション後、バッファーで簡単に洗浄し余分な一次抗体を除去します。次に酵素又は蛍光色素分子が結合している二次抗体を一次抗体に反応させます。数時間後、バッファーで複数回洗浄し余分な抗体を除去します。

ターゲットを標識できたら次は検出していきます。酵素標識された二次抗体を用いる場合は発色基質により検出します。基質と酵素が相互に作用したときに発色するシステムです。染色工程が完了した約2分後に、すばやく切片を水に浸し反応を停止させます。

抗体染色後に、神経組織をさらに染色することもできます。

例えば、塩基性色素のクレシルバイオレットを用いたニッスル染色を行うことで染色後の組織をより区別しやすくなります。クレシルバイオレットは核酸に結合します。

まず色素溶液を濾過して溶解していない結晶を取り除きます。その後目的のコントラストがつくまでスライドをインキュベートします。そして切片を水で複数回洗浄し反応を停止させます。

その後、過剰な染色剤を除去し切片を脱水するためにアルコールに浸していきます。さらに切片をキシレンで洗浄してアルコールを除去することで、イメージング解析を向上させることができます。

染色した切片を保存しておきたいときには、封入剤、そのあとにカバーガラスをのせ一晩乾燥させます。

染色法の工程とその目的を知ったところで、実際のアプリケーション例を見てみましょう。

組織染色は個別のニューロンを観察するために日常的に利用されています。レイザーキャプチャーマイクロダイセクション法と呼ばれるテクニックを用いると、レーザーを使って染色された特定の細胞を切り出すことができます。その後、遺伝子を抽出し神経特異的な遺伝子発現についての研究が行われます。

また、各ニューロンの形態学的特徴を調べるためにも染色法が活躍します。ここでは免疫組織化学によりGFPを発現させシナプスの樹状突起を観察しています。通常の細胞と活性化した細胞を比べることで、刺激反応による変化を確認することができます。

また、免疫染色によりタンパク質の発現を比較し神経系細胞集団の存在の特定と識別が可能になります。

例えばマウスの小脳をzebrin 2抗体で染色することで、プルキンエ細胞と呼ばれるニューロンを特定することができます。

ここまで脳切片の染色法についてご覧いただきました。このビデオでは、一般的な染色方法とその目的、さらに免疫染色やニッスル染色の染色工程を紹介しました。ご覧いただきありがとうございました。

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