行動神経科学入門

Neuroscience

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Summary

行動神経科学は、神経系が行動をどのように制御しているのか、又、脳の様々な機能領域やネットワークが行動や病態とどう関わり合っているのかを研究するための学問です。この分野では、動物を用いて行うトレーニングテクニックや被験者の協力を得て行うイメージング実験に至るまでいろいろな実験テクニックが利用されます。

このビデオでは、最初に神経行動科学の歴史を振り返り、脳が行動を制御するという現在までの研究成果をご覧になれます。その後、神経ネットワークやある機能に対して活性化される特定の脳領域についての研究など神経科学分野で進められている主な研究内容とよく利用される実験方法について解説しています。ここでは、オペラント条件付け実験や機能的磁気共鳴画像法(fMRI)などのニューロイメージングテクニックが登場します。最後に、スキナー箱を用いた動物の訓練やヒト神経疾患を研究するための脳波記録法(EEG)などこれらテクニックを利用する今日の研究例をご覧いただきます。

Cite this Video

JoVE Science Education Database. 神経科学のエッセンシャル. 行動神経科学入門. JoVE, Cambridge, MA, (2017).

行動神経科学とは神経系がどのようにヒトおよび動物の行動を制御しているのかを明らかにするための学問です。

この分野では、動物のトレーニングテクニックやニューロイメージングなど様々なツールを使って、脳の機能領域やネットワークが行動や病態とどう関わっているのか研究されています。

このビデオでは、行動神経科学研究の簡単な歴史と鍵となる研究内容、およびそれらの研究を進めるためによく利用される実験方法、そして最後にこの分野の今日の研究例を紹介していきます。

それでは早速、行動神経科学研究の歴史を振り返ってみましょう。

脳が行動を支配していると唱えた最初の人物は、古代ギリシャのヒポクラテスとその弟子たちでした。

それから1662年、René Descartesは脳が行動を支配することを説明する一つのモデルを確立し、魂が松果体を使って身体をコントロールすると考えました。

しかしその後数世紀でDescartesの考えは誤りであることが証明されていきます。例えば1848年Phineas Gageは、鉄道工事中の事故で鉄の棒が頭蓋骨を貫通し、一命を取り留めたものの事故後は性格が一変してしまいます。このことから前頭葉が行動に大きく影響することが明らかになったのです。そして19世紀後半にはPaul Broca、Carl Wernickeにより読み書きに障害の出る失語症の研究が進められ、言語を司る脳領域であるブローカ野とウェルニッケ野が特定されました。

そののちの1890年、William Jamesにより心理学は生物学を通じて研究されるべきであると提唱され、多くの行動変容の研究が成されました。

1930年代、Jamesの助言に従い BF Skinnerが開発したスキナー箱と呼ばれる実験装置は現在でも罰と報酬を利用した動物実験に利用されています。

1900年代になるとニューロイメージングテクニックが発展し磁気共鳴画像法、MRIが登場します。

1990年、小川誠二博士はそのメソッドを発展させ機能的MRIを確立しました。これは経時的に脳の活動を観察できるため、神経科学分野では画期的な技術となっています。

ここまで行動神経科学の歴史を見てきました。ここからは今日この分野で進められている主な研究内容を紹介していきます。

神経ネットワークの相関性、又ある機能に対して活性化される特定の脳領域の研究が行われています。

例えば、動きを制御する神経系について知りたいときはバランスや運動機能をコントロールするメカニズムが研究されます。一次運動野、運動前野、小脳、黒室に対する機能マップは既に知られています。現在は各領域内や領域間でどのように運動が制御されているのか調べられています。

その他にも、神経系が刺激を区別するメカニズムやその刺激に対する反応について研究されています。

ここでは、異なる種類の報酬に対する動物行動の違いについて実験されています。これによりどのような時に報酬系が活性化し依存が形成されるのか評価できます。やる気と報酬を制御する領域は辺縁系と腹側被蓋野です。

また、学習記憶に関する神経系のメカニズムについても研究が行われています。例えば、恐怖感に関連づけられる記憶の形成と保持についての研究は、心的外傷後ストレス障害の治療につながります。一般的にここで重要な働きをするのは海馬と扁桃体です。

さらに、顔認識など高次の認知機能にも関心がもたれています。ここでは、見覚えのある顔とそうでない顔に対する反応を調べています。顔認識に対するヒトの神経系は、紡錘状回の顔領域にあることが分かっています。

行動神経科学分野の主な研究内容を把握したところで、実験方法を見ていきましょう。この分野では動物の脳に処置を加えたのちに行動実験を実施する方法がよく取られます。これにより神経生物学と行動との関連性を研究できます。

運動機能を調べるにはロータロッドなどの実験装置を利用します。動物を回転するロッドにのせ落ちないように歩かせます。またエサを取らせ器用さをテストするための容器も利用されます。

オペラント条件付け実験などの行動変容の研究にはスキニー箱などを利用し、エサや薬を用いて報酬や嫌悪刺激を能動的に受け入れさせる方法が利用されます。

Y迷路や Morris water mazeなどの実験装置を用いて、動物にゴールを探索させ覚えさせることで学習と記憶の研究が行われます。

現在研究されている行動は複雑なものが多いため被験者を必要とすることがあります。例として、言語など高次の認知機能を調べるために、被験者に認知的課題を課し脳波記録法で頭皮を通して神経活動を測定することがあります。

また、機能的磁気共鳴画像法又はfMRIのような機能イメージング法もヒト認知機能の研究に利用されます。課題遂行時の血流量の変化に対応する信号を測定し、脳の活動領域の統計マップと重ねることで画像化する手法です。

行動神経科学研究に利用される実験方法の次はそれらを用いて実施される研究例を見ていきましょう。

この実験ではまずマウスをスキナー箱に入れ、レバーを押したらエサが出てくることを繰り返し学習させます。その後動物にレプチンなどの神経を活性化するホルモンを投与し同じことをさせたときのエサに対する脳活動性の変化を評価します。

機能的MRIを用いて意思決定などの高次認知機能の研究が行われています。

ここでは被験者にドットの動きが速いか遅いかを判断してもらいfMRIで測定しています。

脳波記録法、EEGは非侵襲的解析法であり、認知症やアルツハイマー病の病態研究に利用されます。ここでは被験者の頭皮に電極を装着し、脳内で発生する電気活動を測定しています。神経疾患や精神疾患を伴う場合は異常脳波が観察されることがあります。

ここまでJoVE行動神経科学入門編をご覧いただきました。行動神経科学研究の簡単な歴史と研究内容および実験方法、そしてそのメソッドを利用した今日の研究例を紹介しました。ご覧いただきありがとうございました。

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