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Biology II: Mouse, Zebrafish, and Chick

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マウスのケアとメンテナンスの基本

Summary

Overview

マウス(Mus musculus)は、繁殖力が高く性的成熟の早い小型齧歯動物であり、たくさんの匹数を揃えることができるため生物学研究に適しています。他の哺乳動物に比べると、マウスのメンテナンスは比較的低コストで簡単に行うことができます。しかしながら、マウスの健康状態や安全を保持し、実験の再現性を向上させるためには特別な飼育法が不可欠となります。

このビデオでは、実験用のマウスをできる限り人道的に扱うための方法を紹介しています。最初に一般的なマウス飼育設備について解説しています。例えば、通常プラスチック製のマウス用ケージの底には柔らかい床敷を作ってやり、巣を作るための材料も一緒に入れておきます。そして、一般的なマウスのエサとして用いられる小さなペレット状の食べ物(”chow”と呼ばれます)を紹介しています。また、マウスを用いた実験を進めるためにとても重要となるマウスのハンドリングテクニック(”scruffing”と呼ばれます)や施設内のマウスを管理するための対策も紹介しています。最後に、実験装置や実験に応じたエサの調整法、そして”scruffing”テクニックを用いた一般的な薬の投与方法も学ぶことができます。

Procedure

マウスの健康状態を保ち多くの実験データを得るためには、適切な飼育が不可欠となります。清潔で安定したコンディションを維持することで感染や雑菌、さらにストレスからマウスを守ることができます。ストレスは人間だけでなくマウスにも影響を与えてしまうのです。このビデオでは、実験動物施設でのマウスの飼育法やエサについて、またケガや感染を避けるための適切なマウスの取り扱い方を紹介していきます。

マウスにとって素晴らしい飼育環境を整えるためにマウスの生態を知っておきましょう。さて、マウスはどこに生育しているのでしょうか? マウスは最も順応性の高い哺乳類であり、地球上どこででも発見できます。

自然界で生きるマウスは、安全で狭い巣や巣穴をすみかとします。マウスは、1日の大半を巣穴で過ごす夜行性の動物です。マウスのサーカディアンリズムは人間とは逆さまであり、私達がベッドの中で安んでいる時、マウスは元気に動き回っています。

どのようにマウスの飼育環境を整えたらよいのでしょうか? 通常、実験用マウスはしっかりとしたプラスチック製の小さなケージの中で飼育します。ケージの底には排泄物を吸収し保温効果もある細かくしたコーンコブや木くずを敷きつめます。交換は頻繁に行い、ケージ内は常に清潔に保つようにしましょう。

巣を作るための材料を一緒に入れておくと、野生のマウスのように巣穴を作ることができ理想的です。マウスにとって居心地の良い環境を整えてあげましょう。マウスは動き回る生き物なので 、ケージの上には金属製の蓋をのせ、マウスが逃げないようにします。通常その蓋には、「ホッパー」と呼ばれるエサ入れとボトルホルダーが付いています。エアフィルターを備えたプラスチックカバーは外部からの汚染防止に役立ちます。

マウスは群れを好むので、多数のマウスを1つのケージで飼育できます。メス5匹までは同じケージで問題なく飼育できます。しかしオスの場合、早い時期から一緒にした場合に限り同じケージで飼育できます。大人になってからでは、縄張り争いが勃発してしまうためです。

通常研究には、一つのケージ分の匹数よりも多くのマウスが必要になります。マウスを入れたケージは、動物施設のラックに並べられており、狭いスペースで多くの匹数を飼育できるようになっています。

施設内では、自然なサーカディアンリズムを維持するために、明期が14時間の明暗サイクルに設定します。

実験用マウスのすみかが分かったところで、食事について見ていきましょう。自然界のマウスは主にベジタリアンです。いつも炭水化物や穀物を探し回ります。

研究室では、小さなペレット状のエサを使用します。おいしい炭水化物に加え、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルがバランスよく配合されています。マウスの系統や実験系によって、エサの成分比を調整します。一般的に、エサと水はマウスが自由に好きなときに摂取できるようになっています。

次は実験用マウスの取り扱いについて学びましょう。マウス実験を開始するには、必ずIACUCなどの施設の実験動物管理委員会から承認を得なければなりません。IACUCは、出来る限りヒトに近い環境下で実験を行うことを規定しています。

承認後に実験を開始できます。ほとんどの動物施設ではSPF環境が整えられています。つまり、その施設では感染病原体やコンタミネーションを防御する特別なケアが実施されているということです。

新種の病原菌の感染や暴露を避けるために施設に入る前には必ずPPE、個人用保護具を身につけるようにして下さい。また、施設内でも研究室でもマウスを扱う際にはグローブを着用しましょう。行動実験のような実験を成功させるには、ヒトのハンドリング操作にマウスを慣らす必要があります。

ハンドリングに慣れていないマウスはストレスを感じ噛み付いたり、逆にマウスに怪我をさせてしまう恐れもあります。また、ストレスはマウスの不安行動を助長し攻撃性が高まるなどするため、実験結果に影響を及ぼしてしまいます。

そして、たとえハンドリング慣れしたマウスでも慎重に扱わなければなりません。ケージから取り出すときには、まずマウスのしっぽの根元付近をつまみ、ケージの蓋の柵につかまらせます。しっかりと固定するために、マウスを少し後ろにひっぱり、しっぽを小指と薬指の間で挟んでから肩の部分から首筋にかけてつまみあげます。

慣れてきたら、最初に首元をつまみそれからしっぽを握っても構いません。

ケージには飼育中のマウスについての情報をラベルしておきます。また、ケージ内の各マウスを識別するための対策として、マウスの耳にパンチをしたりタグをつけたり、又はしっぽに印をつけるなどしておきます。

ここまでマウスの飼育の基本を学んできました。ここからはその応用です。

様々な行動実験用装置を用いて、記憶のテストや報酬をベースとした行動、嗅覚嗜好性などを評価できます。ここでは、ワイルドタイプ又はノックアウトマウスにウォーターメーズの出口を覚えさせ、その記憶能力を比較し特定の遺伝子の空間記憶への影響を評価しています。

実験条件に従いマウスのエサを調整することもあります。ここでは、マウスが炭水化物を好む性質を利用し、前足の動きを計測しています。通常高齢マウスはパスタを食べるのに時間がかかってしまいます。これは加齢による衰えによるもので、片方の前足だけで扱おうとしたり、落としたりしてしまうのです。

薬物をマウスに投与して試験することがあります。このときインジェクションによる投与が一般的です。

首元を掴んでマウスを固定することで、腹腔内投与による体腔への薬の注入が容易に実施できます。

ここまで、マウスの取り扱いについてご覧いただきました。このビデオでは、研究施設でのマウスの飼育方法とエサについて、適切なマウスのハンドリング法、マウスのケアの重要性と実験に及ぼす影響を解説しました。ご覧いただきありがとうございました。

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