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ニューロンのカルシウムイメージング法
 
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ニューロンのカルシウムイメージング法

Summary

Overview

カルシウムイオンはニューロンの機能に重要な役割を果たします。カルシウムイオンは、遺伝子発現の変化やシナプス小胞からの神経伝達物質放出などの細胞内シグナルとして働きます。細胞内のカルシウム濃度変化は、様々なシグナルに応答し選択的にイオンを輸送するポンプの存在により極めて流動的です。カルシウムイメージング法は、細胞内カルシウムの流動を測定し、活動中のニューロンのカルシウムシグナリングを直接観察できる素晴らしいテクニックです。

このビデオでは、まずカルシウムイメージングに用いる重要な試薬であるカルシウム指示薬について解説しています。代表的な指示薬であるFura-2やレシオメトリック及び非レシオメトリックカルシウム指示薬の原理について学ぶことができます。次に、細胞や指示薬の準備から蛍光画像の取得と解析に至るまで、一般的なカルシウムイメージング実験を紹介しています。最後に、神経回路網や感覚処理の研究などカルシウムイメージング法を利用した実験例をご覧いただけます。

Procedure

カルシウムイメージング法はニューロン機能に関わるカルシウムイオンの役割を明らかにするための非常に有用なテクニックです。カルシウムイオンは、シナプス小飽からの神経伝達物質の放出など数多くの細胞内シグナル発信を制御しています。カルシウムイメージング法を用いることで、神経と神経系組織間のカルシウムの流動を直接測定できます。このビデオでは、カルシウム指示薬、イメージング実験、このテクニックのアプリケーション例を紹介していきます。

最初にカルシウム指示薬の生化学的原理を学びましょう。

Fura-2をはじめとするカルシウム指示薬は、キレート剤であり、2つのパーツで構成されています。1つ目はカルシウムに選択的に結合するキレート部位です。2つ目は紫外線を照射する事で特異的な波長の蛍光を発する蛍光性色素部位です。

カルシウムに指示薬が結合するとその蛍光特性が変わり、カルシウム濃度の変化を定量化できるようになります。2種類の励起波長をニューロンに照射したとき、蛍光強度の違いがあらわれてきます。

さらにほとんどのカルシウム指示薬は細胞膜を通過できるように改良されており、ニューロンに直接加えることも脳組織に注入し動物レベルで実験を行うこともできます。

指示薬の中には、カルシウム結合の有無により2つの励起波長又は蛍光波長を有するものがあります。例えばFura-2がもつ励起波長は、カルシウムが結合しているか、していないかで異なります。2種類の励起波長の蛍光強度比をとることで、より厳密にカルシウム濃度を測定できます。

Fura-2のような2波長励起又は蛍光を有する色素は、レシオメトリックカルシウム指示薬と呼ばれます。非レシオメトリック指示薬は単一の励起及び蛍光波長を有しますが、光褪色を受けやすいため露光時間が長くなると蛍光の消失が起こってしまいます。

実験で指示薬を使う前に鍵となるのが、既知濃度のカルシウム溶液を使った蛍光測定のキャリブレーションです。これにより蛍光強度の測定による細胞内カルシウムの精密な評価が可能となります。

カルシウム指示薬の原理を学んだところで、ニューロンでのカルシウム流動をイメージングしていきましょう。

選択したカルシウム指示薬、例えばFura-2にさらに生理的溶液を混合します。この時、ボルテックスを使ってしっかり混和させましょう。十分に混和したらディッシュに移します。そしてカバースリップをニューロンが培養されているプレートから指示薬の入ったディッシュに移します。次に、適切な時間と温度条件に従い暗所でインキュベートします。ここでは37℃で30分です。インキュベーション終了後、カバースリップを指示薬の入っていないディッシュに移します。

次にカバースリップを顕微鏡のイメージング用チャンバーに置きます。それから、灌流装置の入力ラインに接続しゆっくりとチャンバーを満たします。チャンバーをステージに固定し、出力ラインをつないだら、きちんと灌流できていることを確認して下さい。

顕微鏡の準備が整ったら、可視光下でニューロンに焦点を合わせます。指示薬をテストするため、細胞に340nmと380nmの光を照射します。Fura-2を使うと、カルシウムが結合していない非活性化ニューロンは380nmでより強い蛍光を発します。

次に、ダイナミックレンジを最適化するためにカメラのセッティングを行います。画像を取得し、関心領域又はROIツールを使って各波長のバックグラウンド強度を測定します。ソフトウェアにその値を入力することで、その後は画像から自動的にバックグラウンドが差し引かれます。

初期設定が完了したら、5つほど視野を選択しイメージングを行いソフトウェアにその座標を保存します。測定を開始すると自動的にステージが視野へと移動し波長340nmと380nmの電界強度比を算出します。それから次の視野へと移動し全ての視野で測定が行われます。

時には灌流液に薬剤を加え、細胞内カルシウムレベルを変動させて実験が行われます。高濃度カリウム溶液はニューロンを脱分極させ、このタイムラプスイメージングのように細胞内カルシウムの上昇を誘発するため、適切なポジティブコントロールになります。データが収集されたら解析へと進みます。

ソフトウェアを使って目的のニューロン又はニューロンの一部を含む領域を選択し結果を解析していきます。全ての画像の各関心領域の両波長に対する蛍光強度をレシオメトリック方式で計測します。この情報を元に、経時的な細胞内カルシウム濃度変動の定量的評価を行うことができます。

カルシウムイメージング実験について学んだところで、ここからニューロンのカルシウムイメージングが今日の研究にどう貢献しているのか見ていきましょう。

何よりもまず、カルシウムイメージング法はニューロン活動に関連する細胞内カルシウムの流動を調べるために利用されます。ここでは、ニューロンにそれぞれカルシウム指示薬を注入しパッチクランプ法が実施されています。パッチクランプ法で膜電位を精密に制御することでカルシウム流動ダイナミクスを明らかにできます。

さらに、カルシウムイメージング法によりニューロン同士が相互に活動していることを確認できます。

ここでは、このテクニックを利用し40個のニューロンの蛍光シグナルを評価しています。その結果、シグナル伝達のようなネットワークの特性とニューロンとの相関を確認できます。

またカルシウムダイナミクスにより、ニューロンが臭いなど外からのシグナルを処理するメカニズムを解明できます。

組織内のニューロンをFura-2と共に培養し、尿や精製したフェロモンなどの臭い分子を添加しイメージングを行います。臭覚ニューロンに臭覚受容体タンパク質を発現させることで、単一ニューロンが細胞活動に与える影響と臭いへの反応を直接観察できます。

ここまでニューロンのカルシウムイメージング法を紹介してきました。

このビデオでは、このテクニックの特性と一般的な実験方法を学びました。たくさんの重要な役割をもつカルシウムのイメージングは、ニューロンのメカニズム解明に欠かせないツールです。

ご覧いただきありがとうございました。

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