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Biology II: Mouse, Zebrafish, and Chick

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ゼブラフィッシュへのマイクロインジェクション法
 
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ゼブラフィッシュへのマイクロインジェクション法

Summary

Overview

ゼブラフィッシュ(Danio rerio)を研究に用いる利点の一つは、初期胚へのマイクロインジェクションにより容易に遺伝子を操作できることです。このテクニックにより、遺伝物質を含む液体やノックダウン目的の物質を胚割球に挿入することができます。受精したばかりの卵の胚細胞は卵黄の上に存在しています。細胞質への挿入は、割球に直接インジェクション又は卵黄にインジェクションし原形質流動を利用して拡散させることもできます。遺伝子操作を行い胚の表現型を解析することで発生メカニズムの解明につながります。

このビデオでは、ゼブラフィッシュ胚へのマイクロインジェクションの実施方法を紹介しています。インジェクション装置、空気圧により微量注入ができるマイクロインジェクターなどのマイクロインジェクションに必要不可欠な器具、その後、インジェクションを行う際に胚を固定するための寒天培地や、マイクロインジェクション装置のキャリブレーション方法などの重要な準備工程を説明しています。最後に、mRNAの挿入による遺伝子の過剰発現、アンチセンスモルフォリノオリゴヌクレオチド導入による遺伝子サイレンシング、特異的人工プラスミドDNAを用いたトランスジェニックゼブラフィッシュの作製などマイクロインジェクション法のアプリケーション例を紹介しています。

Procedure

ゼブラフィッシュ胚へのマイクロインジェクション法により溶液を直接注入することで、遺伝子機能や発生動態の研究ができます。インジェクションには通常1から4細胞期の胚が使用されます。なぜなら、この時期の胚には、まだ細胞と卵黄を仕切る膜が存在しないため、液体をどこに注入したとしても組織全体に拡散させることができるためです。マイクロインジェクション法により、タンパク質合成遺伝子の発現やその阻害をコントロールできます。このビデオでは、ピペットの準備、胚の収集、マイクロインジェクション法の工程、そしてこのテクニックが今日の研究でどのように利用されているのかを見ていきます。

まずは、マイクロインジェクションシステムの主要パーツとなる、ステレオスコープ、マイクロインジェクター、ピペットホルダー、マイクロマニピュレーターを紹介します。

マイクロインジェクターは、空気圧を調節し、正確な液量を注入するための装置です。ピペットホルダーは、ピペットを固定し、インジェクターのエアラインと接続しておくために利用します。通常、ピペットホルダーはマイクロマニピュレーター内部に設置されています。この器具を使うことで、ピペットの位置を細かく正確に調整でき、的確なインジェクションが行えます。 また、フットペダルがインジェクターにつながっており、注入を行う時にも自由に両手を使うことができます。そして、ステレオスコープによって胚の観察が可能となり、マイクロインジェクションを行う間、ピペットの先端に焦点を合わせることができます。

インジェクションを始める前に、ガラスニードルを準備する必要があります。マイクロインジェクション用のニードルは、正確な注入を行うために同じサイズである必要があります。ピペットプラーを利用すると、いつも細く鋭いピペットを作製できます。プラーはガラス管に熱を加え引き伸ばす装置で、1度に2本のピペットニードルを作製できます。顕微鏡下、鉗子を使用し、一定量を注入できるように先端をカットします。ゼブラフィッシュ胚に穴を開けるために先端は鋭いのが理想的です。

インジェクション過程を見やすくするため、フェノールレッドを注入液に混合し、インジェクションがうまく行われていることを確認します。

毛細管現象を利用しニードルの先端から注入液をロードします。又は、マイクロローダーシリンジに充填します。準備ができたら、マイクロマニピュレーターに設置されているピペットホルダーにニードルをセットします。

その後、マイクロインジェクターの圧力と時間を設定します。各ニードルのキャリブレーションを行うことで、胚に注入する液量を一定にできます。ステレオスコープを覗きながら、スライド上にのせた一滴のミネラルオイルに溶液を少量注入します。液滴のサイズを測定し、拡散した量を算出します。次に、マイクロインジェクターの圧力をさらに調整し、目的の液滴サイズになるまでこの操作を繰り返します。

ニードルのキャリブレーション終了後は、インジェクション用の胚を準備していきましょう。慎重に胚の位置を定め、インジェクション中に動かないように固定します。チェンバー作製のために、ペトリ皿に鋳型を設置し、融解したアガロースを注ぎ込んだら固まるまで待ちます。

固まったら、鋳型を取り除き、胚の培養液を上から注ぎます。すると胚は鋳型によって作られた窪みに集まります。他にも、アガロースを使って顕微鏡用のスライドに沿って胚を並べる方法があります。そうすることで、マイクロインジェクション用のカラムに配置できます。

胚を配置したら、実際にインジェクションを始めていきましょう。

注入部位は卵黄でも細胞質でも構いませんが、卵黄の方が高度な技術を必要とせず単純です。一方、細胞質への注入はより複雑になりますが、より安定した結果を得ることが出来ます。

卵黄への注入は、マイクロマニピュレーターを使ってニードルを動かし、絨毛膜を破って卵黄に挿入し行います。フットペダルを踏んで、ニードル内の液を卵黄に放出します。原形質流動及び拡散により、注入液は細胞全体に広がっていきます。

細胞質へのインジェクションは胚の配置を慎重に行うことで、効率的に行えます。

インジェクション後は、胚を新しい容器に移し、28.5℃で培養します。頻繁に確認し、死滅した胚は取り除きましょう。

胚へのインジェクションが成功したか否かは、全体的な外観、蛍光マーカー、変化した遺伝子型を解析することで確認できます。

それでは、ゼブラフィッシュ胚へのインジェクション法を使ってどのように遺伝子機能を解明できるのか考えてみましょう。

まずは、合成したmRNAを注入し、特定の遺伝子を過剰発現させ、表現型を解析する手法があります。この手法を使ってタンパク質を発現させることで、細胞骨格再編成など発生に重要な分子について研究できます。

さらに、モルフォリノをインジェクションすることで遺伝子の機能を抑制できます。モルフォリノは安定性のある人工核酸であり、 相補的塩基対として特定のmRNA配列に結合しタンパク質への翻訳を阻害します。その結果mRNAによって合成されるべきタンパク質の欠如が起こり、その欠如が発生にどう影響を及ぼすのかを調べることで特定遺伝子の機能解明につながります。

外来DNAをゼブラフィッシュに導入したいときにもインジェクション法が利用できます。修飾酵素の認識部位を含むDNA配列を挿入することで、効率的にトランスジェニックフィッシュを作製でき、次の世代にも外来遺伝子を引き継ぐことができます。配列次第では、遺伝子発現を特定の組織や発生時期に限定できます。

ここまで初期のゼブラフィッシュ胚へのインジェクション法についてご覧いただきました。このビデオでは、マイクロインジェクションのセットアップ方法、インジェクション用のニードルの使い方、胚の準備、インジェクションテクニックそしてそのアプリケーション例を紹介しました。ご覧いただきありがとうございました。

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