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Biology
Chapter 16: Viruses
16.7:
ウイルスの突然変異
突然変異とは、ゲノム上のDNAやRNAの塩基配列が変化することです。一部の突然変異は、DNAやRNAを複製するポリメラーゼ酵素のエラーにより、ゲノムの複製中に発生します。DNAポリメラーゼとは異なり、RNAポリメラーゼには校正機能がないため、エラーが発生しやすいです。そのため、HIVのようなRNAベースのゲノムを持つウイルスは、DNAベースのゲノムを持つウイルスよりも早く変異が発生します。突然変異と組み換えが適応進化の材料となるため、RNAベースのウイルスは抗ウイルス剤に対する耐性を素早く獲得できるのです。
現代の生物学では、ゲノム配列を比較することで進化史を明らかにすることが大きな目標です。この解析の重要な実用化例が、病気の原因となるウイルスの進化の研究です。ゲノム配列の解析が非常に迅速かつ安価になったことで、病気が発生した際のウイルスの起源や進化の過程を調べることができるようになりました。
例えば、2013年に中国でH7N9と呼ばれる新型の鳥インフルエンザが発生し、人に重篤な呼吸器疾患を引き起こしました。人間と複数の鳥類から分離されたウイルスの変異を比較した結果、このインフルエンザ株の祖先は、鶏に感染する前に中国の家畜であるアヒルの集団で発生したと考えられました。この祖先株は、その後、他の鳥類ウイルスと組み合わされ、ヒトに感染したH7N9株となりました。これらの分析から、生きた家禽市場が人への感染源である可能性が高いことがわかりました。さらに、H7N9株の進化を調べる過程で、ヒトに感染する可能性のある別の鳥インフルエンザ株を発見しました。この研究は、突然変異の進化的な分析が、流行時に疫学者に重要な情報を提供できることを示しています。
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