DNAのゲル電気泳動

DNA Gel Electrophoresis
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Basic Methods in Cellular and Molecular Biology
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DNA Gel Electrophoresis

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09:22 min
February 01, 2013

Overview

DNAのゲル電気泳動は、DNA分子の検出と分離を行うための手法です。アガロースでできたゲルマトリックスに電場をかけることで、荷電した粒子が分子量に応じてゲル内を移動していきます。DNAを構成するリン酸基は負に荷電しているため、DNA分子は陽極方向へ移動します。

このビデオでは、アガロースゲルを利用してDNA断片を分離するメカニズムやアガロースゲルの作製、DNAサンプルのロード、DNAの泳動、DNA断片の可視化、実験終了後のゲルとランニングバッファーの廃棄方法など各工程を紹介しています。

Procedure

DNAのゲル電気泳動はDNA断片を分子量に応じて、分離、特定する手法です。

様々なDNA断片をアガロースでできた多孔質のゲルにロードします。アガロースは 紅藻類から得られる糖質です。

電場をかけると断片がゲルを通り抜けて移動します。これはDNAヌクレオチドのリン酸基が負電荷を持つためです。

小さなDNA断片はゲルの網目構造を通過しやすく、反対に大きな断片はゲルを通過するのにより時間がかかります。

泳動が終わったら、目的のDNAサンプルの位置をDNAラダーと呼ばれる既知濃度のバンドパターンと比較します。

実験サンプルとラダーの相対的な位置を比較することで目的のDNA断片の存在がそのサイズに基づき確認できます。

アガロースゲル濃度は、アガロースの質量を加えたバッファーで割った値です。1gのアガロースに100mLのバッファーを加えると1%のゲルができ上がります。低濃度のゲルは大きな断片の特定に、高濃度のゲルは小さな断片の特定に利用します。ゲルの作製にあたり、アガロースを適量測り取り、三角フラスコに入れます。

次にランニングバッファーを加えます。このとき全体量がフラスコの3分の1を超えないようにして下さい。そして撹拌します。

電子レンジの最大出力で加熱しアガロースを溶かします。30秒毎にフラスコを取り出し、撹拌します。これをアガロースが完全に溶解するまで繰り返します。

次にエチジウムブロマイドを0.5mg/mLになるように加えます。エチジウムブロマイドは芳香族化合物であり、DNAの塩基対の間に入り込み、紫外線照射下で強いオレンジ色の蛍光を発します。エチジウムブロマイドは発がん性をもつため、取り扱う際には必ずグローブを着用して下さい。

ゲル用トレイが曲がるのを防ぐため、アガロースは65℃設定のウォーターバスに入れ冷まします。

その後ゲル作製用容器にゲル用トレイをはめ込みます。テープでゲル用トレイの端を塞いで容器の代わりにしても構いません。ゲルにコームをセットし、DNAをロードするためのウェルを作ります。このときDNAサンプルに適切なサイズのコームを選ぶようにしてください。

溶かしたアガロースをゲル用トレイに流し込み、室温で固まるまで待ちます。

アガロースが固まったら、コームを外します。すぐに使用しない場合はラップでカバーし4℃で保存して下さい。

すぐに始める場合は、ゲルをゲルボックスにセットしましょう。

まず始めに、分離するDNAサンプルにゲル用ローディングダイを加えます。通常ローディングダイは6倍の濃度に調製されています。ローディングダイはサンプルを可視化でき、ウェルへのサンプルのロード、また泳動状況の確認が容易になります。

パワーサプライ装置を適切な電圧にセットします。

次にゲルボックスにランニングバッファーをゲル表面が浸るまで加えます。 ここではゲルを作製した時と同じバッファーを使用して下さい。

ゲルボックスをパワーサプライ装置につなぎ、スイッチを入れます。するとDNAは負の電荷をもっているため陽極、通常は赤の方に流れていきます。ここで、黒のリード、つまり陰極をゲルボックスのボトム側につながないように注意しましょう。黒猫は不吉という迷信を思い出せば間違えませんね。陰極(black CAThode)は通常黒です。サンプルは赤い方、つまり陽極に向かって移動します。ゲルボックスとパワーサプライがきちんと作動しているかは、電極から泡が発生していることを確認することで電流が流れていると判断できます。

ゲルボックスの蓋をはずします。そしてゆっくりと丁寧にDNAサンプルをロードします。サンプル中のローディングダイのおかげでサンプルがゲルに浸透し、さらにサンプルの泳動状況も確認できます。常にDNAの分子量マーカー、又はラダーをサンプルと共にロードしましょう。

蓋をします。再度、電極がパワーサプライの正しい位置に接続されているか確認して下さい。

スイッチを入れます。染料が適切な位置にくるまで泳動します。

電気泳動が完了したら、パワーサプライを切り、ゲルボックスの蓋をはずします。

ゲルボックスからゲルを取り出し、ゲル表面の余分なバッファーを除きます。ペーパータオルの上にゲル用トレイを置き、ランニングバッファーをすべて除きます。

DNA断片を可視化するために、トレイからゲルを取り出し、紫外線照射します。

DNA断片がオレンジ色の蛍光バンドとして出てくるはずです。ゲルの写真を撮ります。

実験終了後、ゲルとランニングバッファーを規則に従い正しく廃棄して下さい。その際はエチジウムブロマイドの暴露を避けるために必ずグローブを着用して下さい。

ここまでDNAのゲル電気泳動の実施方法を見てきました。さてここからは、非常に有用なDNAのゲル電気泳動の利用方法を見ていきましょう。

これは、PCR産物を分離後のアガロースゲル電気泳動の結果です。ゲルにロードしたDNA断片はくっきりと明確なバンドとして現れています。DNAスタンダードのバンドパターンと比較することでサンプルのサイズが推定できます。この実験では、2レーンのDNAラダーと765塩基対、880塩基対、1022塩基対のDNA断片が1.5%アガロースゲルで分離されています。

DNAのゲル電気泳動は目的のDNA断片の存在を確認できるだけでなく、ゲルから精製する工程と組み合わせることもできます。通常カミソリの刃を使って目的のDNA断片を切り出して収集し、DNAサンプルを回収します。

さらに、アガロースゲル電気泳動は転写ブロッティングと組み合わせることもできます。これは電気泳動により分離したサンプル中の特異的なDNA又はRNA配列をセルロース膜に転写し、放射性プローブを使って、DNA又はRNAを検出する手法です。

標準的なDNAのゲル電気泳動はゲノムDNAのような15-20kbよりも大きい分子量のDNAの分離にはふさわしくありません。特に高分子のDNAサンプルの分離には、パルスフィールドゲル電気泳動が適しています。これは、電場の方向を切り替えることによりDNAを泳動させる方法です。

この手法にはゲル周辺の様々な方向に対になった電極が設置してある専用の泳動装置が必要になります。この手法は、生物群間のゲノムサイズの差を検出するために利用されます。ここでは異なる湖沼環境で採取してきた様々な微生物郡からプールしたDNAサンプルの検出を行っています。

ここまでDNAのゲル電気泳動についてご覧いただきました。このビデオでは、基本概念、アガロースゲルの調製法、サンプルのロードについて、泳動方法、そしてアガロースゲル電気泳動法の応用例を紹介しました。ご覧いただきありがとうございました。

Transcript

DNAゲル電気泳動は、サイズに基づいてDNA断片を分離し、同定するために使用される技術です。

さまざまなサイズのDNA断片を、アガロースから作られた多孔質ゲルにロードしますか?紅藻類に含まれる炭水化物。

電場が印加されると、DNAヌクレオチドの負に帯電したリン酸基のおかげで、フラグメントはゲル内を移動します。

DNAの小さな断片は、ゲルマトリックス内を移動するのが難しい大きな断片よりもゲル内を移動しやすくなります。

ゲルランが完了すると、DNAサンプルの位置を、DNAラダーと呼ばれる既知のサイズの一連のフラグメントまたはバンドと比較できます。

次に、目的のフラグメントの存在は、そのサイズに基づいて確認でき、これはテストサンプルのラダーのフラグメントとの相対的な位置を比較することによって決定されます。

アガロースゲルは、重量オーバーボリュームパーセント溶液を使用して調製されます。したがって、100mlの緩衝液に1グラムのアガロースを入れると、1%のゲルになります。 ゲルの割合が低いほど大きなフラグメントの分離が良くなり、ゲルの割合が高いほど小さなフラグメントが識別しやすくなります。ゲル作成手順を開始するには、適切な量のアガロースを三角フラスコに秤量します。

フラスコにランニングバッファを追加して、バッファの容量がフラスコの容量の1/3を超えないようにします。 次に、渦を巻いて混ぜます。

アガロース/バッファー混合物を、マイクロ波で最大電力で加熱することにより溶かします。30秒ごとにフラスコを取り外し、内容物を渦巻いてよく混ぜます。アガロースが完全に溶解するまで繰り返します。

次に、臭化エチジウムを0.5 mg / mlの濃度に添加します。臭化エチジウムは、DNAの個々の塩基対の間に収まる芳香族化合物であり、UV光の下でDNAに強いオレンジ色の蛍光を発させます。臭化エチジウムは発がん性物質であるため、この化合物を含むゲルを取り扱うときは常に手袋を着用する必要があることに注意することが重要です。

ゲルトレイが反るのを防ぐために、アガロースを65に入れて冷ましますか?Cウォーターバス。

アガロースが冷却されている間、ゲルトレイを鋳造装置に入れてゲル型を準備します。 別の方法として、テープを使用してゲルトレイの開いた端をシールし、型を作成することもできます。 ゲルにコームを入れると、DNAがロードされるウェルが作成されます。コームがDNAサンプルに適したサイズのウェルを作成することを確認してください。

溶融したアガロースをゲル型に流し込み、室温で硬化させます。

アガロースが固まったら、櫛を取り出します。ジェルをすぐに使用しない場合は、ラップで包んで4時に保管してください。使用までC。

ゲルをすぐに使用する場合は、ジェルボックスに入れてください。

この手順を開始するには、分離するDNAサンプルにゲルローディング色素を添加します。ローディング染料は通常、6倍の濃度で製造されます。 色素のローディングは、サンプルを視覚化してウェルにロードするのに役立ち、分析中にサンプルがどれだけ移動したかを判断するのに役立ちます。

電源を希望のボリュームに設定しますtage。

次に、ゲルの表面を覆うのに十分なランニングバッファーをゲルボックスに加えます。ゲルの調製に使用したものと同じランニングバッファーを使用してください。

ジェルボックスのリード線を電源に接続し、電源を入れます。 DNAは負に帯電しており、正のアノードに向かって移動し、一般的に色は赤であることを忘れないでください。 黒いリード線またはカソードをゲルボックスの底に接続しないように注意してください。ですから、黒猫は不運、またはネガティブであり、したがって黒猫はネガティブであることを忘れないでください。 ゲルを赤またはアノードに流します。ゲルボックスと電源の両方が機能していることを確認するため。電極に気泡が見えるのは、電流が流れていることを示しています。

ジェルボックスの蓋を外します。DNAサンプルをゆっくりと慎重にゲルにロードします。 ここでも、サンプル中のローディング色素により、サンプルがゲルに沈み込み、サンプルがどれだけ移動したかを追跡するのに役立ちます。DNAサイズマーカー(ラダー)は、常に実験サンプルと一緒にロードする必要があります。

蓋を元に戻します。電極が電源の正しいスロットに差し込まれていることを再確認してください。

電源を入れます。色素が適切な距離に移動するまでゲルを泳動します。

電気泳動ランが完了したら、電源をOFFにし、ゲルボックスのフタを外します。

ゲルボックスからゲルを取り出し、ゲル表面の余分なバッファーを排出します。ジェルトレイをペーパータオルの上に置き、残っているランニングバッファーを吸収します。

DNA断片を可視化するには、ゲルトレイからゲルを取り出し、ゲルを紫外線にさらします。

DNA断片はオレンジ色の蛍光バンドとして現れるはずです。 ジェルの写真を撮ります。

実験の最後に、施設の規則に従ってゲルとランニングバッファーを適切に廃棄してください。繰り返しになりますが、エチジウムブロマイドへの曝露を避けるために、常にゲルとランニングバッファーを手袋で取り扱うことを忘れないでください。

これで、DNAゲル電気泳動の実行方法を見てきました。この非常に便利な方法のいくつかのダウンストリームアプリケーションとバリエーションを見てみましょう。

ここでは、PCR産物を分離した後のアガロースゲル電気泳動結果を示します。ゲルにロードされたDNA断片は、明確に定義されたバンドとして見えます。DNA標準またはラダーは、サンプルバンドのサイズを有用な決定が可能な程度まで分離する必要があります。この例では、765塩基対、880塩基対、および1022塩基対のDNA断片を、2log DNAラダーを備えた1.5%アガロースゲル上で分離します。

目的のDNA断片の存在を確認するだけでなく、DNAゲル電気泳動はゲル精製手順と組み合わせることができます。 通常、カミソリの刃を使用して目的のDNA断片を切り取り、それを収集し、その中のDNAサンプルを回収できるようにします。

アガロースゲルエレクトロフェシスは、DNA(RNA)をセルロースメンブレンに転写し、放射性プローブを使用して電気泳動分離サンプル中の特定のDNAまたはRNA配列を同定するトランスファーブロッティングと組み合わせることもできます。

標準的なDNAゲル電気泳動は、ゲノムDNAのようにサイズが15〜20 kbを超える高分子量DNAの分離には理想的ではありません。 大きなDNAサンプルを分離するために、パルスフィールドゲル電気泳動が使用され、ゲルを異なる方向に変化する、またはパルスする電界にさらします。この手法には、ゲルの周囲に異なる向きに配列された一対の電極を備えた特殊なゲル走行装置が含まれます。 これは、異なる湖環境から採取された異なる微生物群集からのプールされたDNAサンプルのように、生物の集団間のゲノムサイズの違いを検出するために使用できます。

DNAゲル電気泳動の紹介を見てきました。 このメソッドの背後にある概念、アガロースゲルの調製方法、サンプルのロード方法、ゲルの分析方法、およびアガロースゲル電気泳動の一般的なアプリケーションについて説明しました。 ご覧いただきありがとうございます、そしてジェルの実行に頑張ってください。