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6.2:

細菌のシグナル伝達

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Bacterial Signaling

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真核生物と同様に 細菌の化学的シグナル伝達は 細胞間内で起こります クオラムセンシングとして知られる 細胞間コミュニケーションは 自己誘導物質と呼ばれる 小さなシグナル伝達分子の生成 放出およびコミュニティ全体での 検出が含まれます これらの分子は ホルモンの様な疎水性ペプチドです 限界濃度に達した後 細胞間で情報を伝達する 化学的シグナルを生成するからです 個々の細胞は 細胞外の自己誘導物質の密度を 検出でき 細胞内で特定の二次メッセンジャーの 環状diGMPの生成を知らせ 生物発光などの行動の 遺伝子の発現に関係する タンパク質の生成を調節します こうした過程により 細菌細胞は 異なる種類の間でも 単一の多細胞生物かのように 共に作用します このコミュニケーションは バイオフィルムつまり 表面に付着する凝集した 細菌細胞の集合体の形成において重要で しばしば栄養上のニーズを受けます 例えばバイオフィルムは 毎朝歯の上に形成されたり 医療用インプラントに侵入する場合もあります

6.2:

細菌のシグナル伝達

概要

時々、細菌集団は共同体のように振る舞います。このために、細胞密度の高さを感知して遺伝子発現を変化させるクオラムセンシングを行います。クオラムセンシングには、細胞外と細胞内の両方のシグナルが関わります。シグナルカスケードは、自己誘導因子と呼ばれる分子から始まります。個々の細菌は、細菌の細胞膜から細胞外へと放出される自己誘導因子を産生します。自己誘導因子は、濃度勾配に沿って細胞外へ受動的に移動するものもあれば、細菌膜を介し能動的に輸送されるものもあります。

細胞外の自己誘導因子濃度が細菌のシグナルとなります

細菌集団の細胞密度が低いとき、自己誘導因子は細菌から拡散し、環境中の自己誘導因子濃度は低く保たれます。細菌が繁殖し、自己誘導因子を排出し続けると、自己誘導因子濃度は上昇し、最終的に閾値に達します。この閾値が、自己誘導因子を細菌の膜受容体と結合させ、細菌コミュニティ全体における遺伝子発現の変化を誘発します。

グラム染色

多くの細菌は、グラム陽性菌とグラム陰性菌に大別されます。これらの用語は、100年以上前にハンス・クリスチャン・ヨアキム・グラムが開発した一連の染色液で処理した際、細菌が呈する色からきています。細菌が紫色を呈していればグラム陽性、赤色を呈していればグラム陰性です。これらの色が細菌に拾われるのは、細胞壁の化学的性質が異なるためです。細菌の細胞壁の組成の違いは、細菌同士や環境との関わり方を決定し、しばしば病気の発症に直接関与します。例えば、グラム陰性菌の細胞壁は主に、エンドトキシンとして知られているリポ多糖でできており、患者の血液中で敗血症性ショックを引き起こします。

グラム陽性菌とグラム陰性菌のクオラムセンシング

グラム陽性菌では、クオラムセンシングはよく二段階で行われます。まず、自己誘導因子の外部濃度が十分に高くなると、自己誘導因子である自己誘導ペプチド(AIP)が膜の受容体に結合します。この結合により、内部の酵素、いわゆるセカンドメッセンジャーキナーゼが活性化され、転写因子をリン酸化します。そうして、転写因子はさまざまな遺伝子発現を制御します。

しかし、多くのグラム陰性菌では、クオラムセンシングは一段階で行われます。自己誘導因子の外部濃度が閾値に達すると、自己誘導因子はトランスポーターを介して膜を通過し、細胞内に再侵入します。一度、細胞内に入った自己誘導因子は、転写因子と直接相互作用し、遺伝子発現を制御します。この種のシグナル伝達には、中間体やセカンドメッセンジャーは必要ありません。自己誘導因子そのものがメッセンジャーとなります。しかし、セカンドメッセンジャーがなくとも、細胞内のシグナル伝達は複雑となりうるのです。

光を生み出す細菌のシグナル伝達

この一例に、グラム陰性菌のPhotorhabdus luminescensが挙げられます。これは、クオラムセンシング・シグナルとして、また細胞内シグナルとしてオートインデューサー2(AI-2)を産生します。菌はAI-2を環境中に放出します。AI-2が菌体外の閾値レベルに達すると、AI-2は菌体膜上のATP結合カセット(ABC)トランスポーターに結合し、ABCトランスポーターによって再び吸収されます。そして、細胞内キナーゼであるLsrKがAI-2をリン酸化します。このようにして一度活性化されたAI-2は、転写因子として機能し、ルシフェラーゼという酵素をコードする遺伝子を活性化します。ルシフェラーゼは、特定の反応を触媒することで光を発します。そのため、Photorhabdus luminescens の個体数が臨界密度に達したときのみ、初めて生物発光を見ることができるのです。この細菌は、アメリカ南北戦争のシャイロの戦いの後に兵士が傷口で見た青緑色の光の原因ではないかと言われています。

医療用埋め込み機器のクオラムシグナリングと細菌感染

医療用インプラントの表面に細菌が広がることは、クオラムシグナリングによって起こり、生命を脅かす感染症を引き起こす可能性があります。医療現場で細菌のバイオフィルム形成(菌膜形成)を阻止する方法を見つけるために、多くの研究が進行中です。このような研究の多くは、細菌が繁殖しにくい新しい材料の開発に焦点を当てています。しかし、ある種の細菌が作り出す物質を含んだ生物学的化合物も、細菌を抑制する特性を持つかどうか調査されています。

Suggested Reading

  1. Bjarnsholt, T. et al. Biofilm Formation – What We Can Learn from Recent Developments. Journal of Internal Medicine. 284 (4), 332-345 (2018).
  2. Camilli, A., Bassler, B.L.. Bacterial Small-Molecule Signaling Pathways. Science. 311 (5764), 1113-1116 (2006).
  3. Kaper, J.B., Sperandio, V. Bacterial Cell-to-Cell Signaling in the Gastrointestinal Tract. Infection and Immunity . 73 (6), 3197-3209 (2005).
  4. Krin, E. et al. Pleiotropic Role of Quorum-Sensing Autoinducer 2 in Photorhabdus Luminescens. Applied and Environmental Microbiology. 72 (10), 6439-6451 (2006).