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36.5:

干ばつ・洪水への対応

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Responses to Drought and Flooding

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水の過不足は 植物に深刻な 脅威をもたらします。正常な状態では、植物が 吸収した水の大部分は 葉や他の植物の 部位から蒸発します。このプロセスを蒸散と呼びます。干ばつのストレスは、土壌から吸収する 水の量よりも 蒸散で失う 水の量が多くなるため、植物を弱らせます。植物は干ばつ ストレスに応答して アブシジン酸を生成し、葉の中に放出します。このホルモンによって 気孔が閉じ、蒸散で水が 失われるのを防ぎます。水不足の状況では、草の葉はしおれて チューブ状になります。こうすることにより、乾燥した空気に触れる葉の 表面面積を減らしています。他の植物は落葉することで 水を節約し、干ばつに対応しています。しかしながら、葉を利用した 節水戦略は、光合成も 減退させてしまいます。一部の植物は、近隣で 干ばつの影響を受けた 植物が放出する 化学信号に応答して、差し迫りつつある より深刻な干ばつに 対応する準備を始めます。一方、水が多すぎると 土壌に含まれる 空気が少なくなり、細胞呼吸に必要な 酸素の量が制限され、植物が窒息する 場合があります。植物の中には 水の多い環境で 生育できるよう、構造的に 適応したものもあります。例えば、マングローブ 種の多くは、通気根と呼ばれる 空気を通す特別な 根を持ち、そこから 酸素を得ています。このような適応を 持たない植物は 浸水した土壌では 酸素欠乏状態となり、根皮質の細胞の 一部が死滅します。このプロセスによって 空気管が形成され、浸水した根に酸素を供給します。深水イネはユニークな イネ品種の植物で、洪水で水面が上昇すると 葉が水中に沈まないよう 背を伸ばします。深水イネが浸水すると、植物ホルモンの エチレンが蓄積し、ジベレリンと呼ばれる ホルモンの生成が 増加します。ジベレリンは植物の 垂直成長を促します。農業家はこのようなストレス耐性 を持つ作物を発達させて 気候の変動と予期せぬ 気象状況に対応しながら 需要を満たさなければなりません。

36.5:

干ばつ・洪水への対応

水は、植物のライフサイクルにおいて重要な役割を果たしています。しかし、水が不足したり、過剰になったりすると、植物に悪影響を及ぼし、深刻な脅威となります。

通常の環境下では、植物に取り込まれた水は、蒸散と呼ばれる過程で葉などから蒸発していきます。乾燥ストレス時には、蒸散による水分の蒸発量が土壌からの吸収量をはるかに上回り、植物はしおれてしまいます。乾燥ストレスに対する植物の一般的な反応は、アブシジン酸というホルモンを合成して気孔を閉じ、蒸散を抑えることです。また、極度の水不足になると、植物は葉を落とすことで対応します。しかし、この方法では光合成が低下し、植物の成長が妨げられます。

微生物による植物の乾燥ストレスの緩和

乾燥ストレスは、乾燥地や半乾燥地の植物の成長や生産性を制限します。しかし、植物の周辺に存在するある種の微生物は、物理的・化学的なシグナルを放出し、乾燥条件下での植物の防御に関する変化を誘発することがあります。例えば、土壌細菌であるPaenibacillus polymyxは、シロイヌナズナに乾燥耐性を誘導することが報告されています。この細菌の最も顕著な効果は、水ストレス下でのマメ科植物の生育に見られました。マメ科植物は窒素固定のために土壌の根粒菌に依存していますが、根粒菌は乾燥ストレスに非常に敏感で、結果的に窒素固定量が非常に少なくなります。しかし、P. polymyxを混ぜた土壌では、根粒菌による窒素固定量が増加し、マメ科植物の成長が促進されました。

水不足と同様に、水の過剰も植物にとっては悲惨なことです。水が多すぎると、土壌中の空隙が減り、細胞呼吸に必要な酸素が制限されるため、植物は窒息してしまいます。ある種の木本植物は、洪水の状況に対応して、茎の基部で組織の膨らみとして現れる肥大成長をします。この肥大成長は、酸素の下方への拡散を助けるとともに、嫌気性代謝から生成される有毒化合物(二酸化炭素、メタン、エタノール)を排出する可能性があります。その他の洪水ストレスに対する適応反応としては、不定根の形成、気孔細胞と呼ばれる特殊な細胞による根の多孔性の増加、酸素の損失を防ぐための外皮の下層化などが挙げられます。

Suggested Reading

Basu, Supratim, Venkategowda Ramegowda, Anuj Kumar, and Andy Pereira. "Plant adaptation to drought stress." F1000Research 5 (2016). [Source]