ほとんどの分子やイオンは 独特のルイス構造を使って 表現することができます しかしある種の化合物は 同じように有効な 複数のルイス構造で 表すことができます 三酸化硫黄のルイス構造を 考えてみましょう 各酸素と中心の 硫黄原子の間の単結合は 酸素原子のオクテットを 満たしています しかし 硫黄のオクテットを 満たすためには 硫黄と酸素原子の一つとの間に 追加の結合を 形成しなければなりません 3つの酸素原子のいずれかが 硫黄と二重結合を形成できるため 3つの異なるルイス構造を とることができます これらの複数のルイス構造は 共鳴構造と呼ばれ 骨格構造は同じままですが 電子の分布が異なります 3つの構造はすべて分子の 有効で等価な表現ですが 自然界には存在しません 実際の構造は 共鳴構造の間で 振動するのではなく 結合長で測定できる 3つのルイス構造の ハイブリッドまたは平均です 亜硫酸塩では 硫黄-酸素単結合の長さは 1.51オングストロームであり 三酸化硫黄では 硫黄-酸素結合の長さは 1.42オングストロームです このようにハイブリッド分子 において結合長は 単結合と二重結合の 中間の長さになります ハイブリッド分子では 二重結合やローンペアに 参加している電子は 複数の結合や原子に 非局在化していることが多く 特定の原子上に 静止しているわけではありません この非局在化によって 電子の ポテンシャルエネルギーが低下し 共鳴安定化と呼ばれる 安定化が起こります 共鳴はベンゼンなどの 芳香族化合物にも 見られます ベンゼンは六方晶の炭素環で 各炭素原子に 水素が1個ずつ結合しており 炭素原子間には 一重結合と二重結合が 交互に存在しています 炭素-炭素二重結合の 位置に基づいて ベンゼンは2つの 共鳴構造を持つことができます 二重結合は通常 単結合よりも短いことを 思い出してください しかし ベンゼンのすべての 炭素-炭素結合は 炭素-炭素単結合と 炭素-炭素二重結合の 中間である 等しい結合長を 持っています したがって ベンゼンは 共鳴ハイブリッドとして存在し 内部に円を持つ 六角形で表すことができます 円はベンゼンが2つの共鳴構造の 混成体であることを示しており 二重結合は特定の 2つの炭素原子に 局在することはできません