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16.3:

バクテリオファージの溶解サイクル

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Lytic Cycle of Bacteriophages

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バクテリオファージつまりバクテリアイーター と呼ばれる種類のウイルスの中には細菌細胞にのみ感染するものがいます。ファージはその形状や遺伝物質が異なることもありますが、この分類で最も独特なのは二本鎖DNAを持つ頭から 尾が伸びている形態です。そのライフサイクルと呼ばれる感染プロセスを開始するには、ファージはまず細菌に付着します。より具体的には、尾部繊維内のタンパク質が 表面の特定の受容体に結合するのです。次に尾部が収縮し、宿主の細胞質内にDNAが注入され、中空カプシドとなります。生殖するための1つの可能性は、溶菌サイクル、つまりバクテリアの細胞機構を引き継ぎ、宿主DNAを破壊し、そしてウイルス成分の産生を含む 複製体制に入ることです。ファージのDNAは保護・コピーされ、新しいウイルスの形成を助けるため 追加のタンパク質セットが合成されます。この自己組織化段階の間に、ウイルスの遺伝子は頭部の内側に入ります。ファージは宿主の細胞壁を分解するタンパク質の 変換さえも行い、水の侵入を可能にします。増殖の結果として、細胞の破裂および細菌のこのような溶解は、何百もの新しいファージを放出します。これらのファージは今や近くの細菌集団を見つけ 感染させることができるのです。

16.3:

バクテリオファージの溶解サイクル

バクテリオファージは、細菌に感染する特殊なウイルスで、ファージとも呼ばれています。バクテリオファージは、細菌に感染する特殊なウイルスで、頭と尻尾のような独特の形態をしているのが大きな特徴です。ファージは、細菌細胞の外側に付着することで感染プロセス(溶解サイクル)を開始します。ファージの尾部にあるタンパク質が、細菌の外表面にある特定の受容体タンパク質に結合することで付着が達成されます。尾部は、ファージのDNAゲノムを細菌の細胞質に注入します。溶解性複製サイクルでは、ファージは細菌の細胞機構を利用して、ファージの複製と拡散に不可欠なタンパク質を作ります。これらのタンパク質の中には、ファージの複製が完了した後、宿主細胞に水分を取り込ませて破裂(溶解)させ、新たな細菌細胞に感染する数百のファージを放出させるものもあります。

ファージ療法

20世紀初頭から、研究者たちは、農作物や人間、農業動物の細菌感染に対抗するために、溶解性バクテリオファージの潜在的な価値を認識していました。ファージは、特定の種類の細菌のみに感染して溶かすことができるため、非常に特異的な抗菌治療法と言えます。これは、私たちが細菌感染症にかかったときによく使う抗生物質が病原菌も善玉菌も殺す広範囲の治療薬であるのに対し、特異性の高い治療法であることを示しています。広範囲の抗生物質が広く使われているため、抗生物質のクラス全体に対して細菌が耐性を持つようになり、かつては治療可能だった感染症が死に至る可能性が出てきました。病原性細菌が抗生物質に耐性を持つようになると、スペクトルの狭いファージ療法が有効な代替手段となる可能性があります。ファージは感染する細菌に非常に特異的であるため、ファージに対する耐性の進化も特定の細菌株に限定されるでしょう。

しかしながら、ファージ療法が抗生物質に代わる有効な手段となるためには、いくつかの障害を克服しなければなりません。例えば、ファージの高い特異性は欠点でもあります。そのため、様々な細菌感染症に対応したファージを大規模に生産することは困難です。さらに、ファージには特異性があるため、感染症を引き起こしている特定の細菌株を知るか、複数の異なるファージの混合物を治療に使用し、そのうちの1つが病原菌と一致することを期待する必要があります。このような欠点はあるが、ファージ治療は現在も活発に研究されています。

Suggested Reading

Doss, Janis, Kayla Culbertson, Delilah Hahn, Joanna Camacho, and Nazir Barekzi. “A Review of Phage Therapy against Bacterial Pathogens of Aquatic and Terrestrial Organisms.” Viruses 9, no. 3 (March 18, 2017). [Source]

Abedon, Stephen T., Pilar García, Peter Mullany, and Rustam Aminov. “Editorial: Phage Therapy: Past, Present and Future.” Frontiers in Microbiology 8 (2017). [Source]