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15.15:

ゲノミクス

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Genomics

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遺伝子の研究は 病気から遺伝、さらには農業から 進化まで、生物学の あらゆる分野に 並々ならぬ見識を もたらしてきました。しかしながら、遺伝子と進化の 仕組みに関する数多くの質問に 対する答えは、生物のゲノム、つまりすべてのDNAを研究しなければ 見つけることができません。完全なゲノムを研究する 分野はゲノミクスと呼ばれています。全ゲノム配列を 解析し、その構成、機能、制御、そして 進化を調べます。ゲノミクスとは、遺伝学、分子生物学、計算科学が 融合した学問です。1953年にDNAの構造が 特定されて以来、科学者たちは個々の 遺伝子配列を解析する 技術を開発してきました。DNAシークエンシングが 重要な発展を遂げたのが 1977年の フレデリック・サンガーによる ゲノム全体の塩基配列を 解析する手法の開発です。この開発が、ショットガン シークエンス法を使った パン酵母とミバエの ゲノム配列の解析に繋がりました。1990年に開始された ヒトゲノム解析計画は、13年間の歳月と27億ドルの 費用をかけた国際的な努力によって 2003年に初めて ヒトゲノムの解析に成功しました。このプロジェクトの成功により、シークエンシング技術が飛躍的な 進歩を遂げ、現在ではヒトゲノムを 1, 000ドル以下の費用で 1日で解析ができるようになりました。膨大に生み出された データに伴って、数学とコンピュータ サイエンスの技術を 組み合わせて 膨大な遺伝データを 整理、分析、比較する バイオインフォマティクス という研究分野が 新たに誕生しました。現在のゲノミクスは ガンの治療などの 個別化医療の 中心的な要素と なっており、人類学、進化学、法医学、農業など 多くの分野でも 引き続き重要な 役割を担っています。

15.15:

ゲノミクス

ゲノミクスとは、生物のすべての遺伝物質を研究する「ゲノムの科学」です。ヒトの場合、ゲノムは、核の中にある23対の染色体とミトコンドリアのDNAで構成されています。ゲノミクスでは、コード化されたDNAとコード化されていないDNAの両方の配列を決定し、分析します。ゲノミクスによって、すべての生物、その進化、そして多様性についての理解が深まります。例えば、系統樹の構築、農作物の生産性や持続性の向上、犯罪捜査の支援、病気に関連する遺伝子の特定、がん患者の最適な治療法の追求など、数え切れないほどの用途があります。

過去30年の間に、特に国際的な「ヒトゲノム計画」の取り組みにより、DNA配列決定の技術が大きく発展しました。現在では、ヒトゲノムの20倍に相当する600億個のDNA塩基を配列する技術が存在しています。このような豊富な情報やビッグデータをもとに、コンピュータ科学者やバイオインフォマティシャンが生物学者と協力して、DNAシーケンスの成果を収集、保存、分析するとともに、データへの安全なアクセスを可能にしています。

ゲノミクスの成功は、生物システム全体を調査する他の大規模な手法への道を開いてくれました。ゲノミクスの成功により、生物システム全体を調査するための他の大規模な手法への道が開かれました。トランスクリプトームは、異なる実験的または病理学的条件の下で、遺伝子の全体的な発現がどのように変化するかを研究するものです。プロテオミクスは、生物やシステムを構成するすべてのタンパク質を研究する学問です。メタボロミクスは、ある生物システムに含まれるすべての代謝物(糖、脂肪、その他の分子)とその相互作用を研究する学問です。バイオインフォマティクスとは切り離せない「オミクス」は、複雑な生命体とその環境を包括的に把握することを可能にし、個別化医療への道を拓くものです。

Suggested Reading

The rise of genomics. Comptes Rendus Biologies. Volume 339, Issues 7–8, July–August 2016, Pages 231-239. [Source]

Multi-omics approaches to disease. Genome Biol. 2017; 18: 83. [Source]