遺伝子の研究は 病気から遺伝、さらには農業から 進化まで、生物学の あらゆる分野に 並々ならぬ見識を もたらしてきました。しかしながら、遺伝子と進化の 仕組みに関する数多くの質問に 対する答えは、生物のゲノム、つまりすべてのDNAを研究しなければ 見つけることができません。完全なゲノムを研究する 分野はゲノミクスと呼ばれています。全ゲノム配列を 解析し、その構成、機能、制御、そして 進化を調べます。ゲノミクスとは、遺伝学、分子生物学、計算科学が 融合した学問です。1953年にDNAの構造が 特定されて以来、科学者たちは個々の 遺伝子配列を解析する 技術を開発してきました。DNAシークエンシングが 重要な発展を遂げたのが 1977年の フレデリック・サンガーによる ゲノム全体の塩基配列を 解析する手法の開発です。この開発が、ショットガン シークエンス法を使った パン酵母とミバエの ゲノム配列の解析に繋がりました。1990年に開始された ヒトゲノム解析計画は、13年間の歳月と27億ドルの 費用をかけた国際的な努力によって 2003年に初めて ヒトゲノムの解析に成功しました。このプロジェクトの成功により、シークエンシング技術が飛躍的な 進歩を遂げ、現在ではヒトゲノムを 1, 000ドル以下の費用で 1日で解析ができるようになりました。膨大に生み出された データに伴って、数学とコンピュータ サイエンスの技術を 組み合わせて 膨大な遺伝データを 整理、分析、比較する バイオインフォマティクス という研究分野が 新たに誕生しました。現在のゲノミクスは ガンの治療などの 個別化医療の 中心的な要素と なっており、人類学、進化学、法医学、農業など 多くの分野でも 引き続き重要な 役割を担っています。