種分化とは、1つまたはそれ以上の 個体群で遺伝子の変異が起き、新しい種が形成される 進化の過程です。遺伝子の変異は 生物の分子組成、行動、物理的構造を 変化させ、遺伝的な隔離を つくりだし、その結果 種が2つに分化します。例えば、顕花植物の ペチュニア属では、1つの遺伝コードによって 花の色が決まります。その遺伝子に変異が起きると、遺伝子隔離が発生します。花の色によって、訪れる受粉者の 種類が異なるため、花の色が異なる 個体群の間に 生殖的隔離が 発生します。群居しない蜂は紫色の 花の種を授粉させます。ハチドリは朱色の 花の種を授粉させます。そして、スズメガは白色の 花の種を授粉させます。その結果、異なるペチュニアの 種が進化しました。もう一つの 遺伝的隔離は、生物の染色体 全体の変化です。例えば、バラモンジンが 交雑、つまり異なる 種同士で交配すると、新しい種の バラモンジンが 形成されます。子孫である雑種は 相同染色体を 2対以上持っているため、繁殖力があるにも関わらず、両親のどちらの種とも 交配することが できません。宿主生物の ゲノムの組み合わせと そこに関与している 共生微生物のゲノムが 遺伝的隔離を 引き起こし、最終的に種分化を 起こすことも示唆されています。たとえば、キョウソヤドリコバチの ある種を交雑すると、幼生発達の過程で 子孫の9割近くが死亡します。実験によると、この雑種の 高い致死率はコバチのゲノム、および、そこに生息している 細菌群集の相互作用が 原因であることが 示唆されており、遺伝子と微生物の 相互作用が交配を抑制し、種分化を維持させることを 示しています。種分化における 遺伝子の役割は 活発に研究されている 分野ですが、1つの遺伝子から、ゲノム構成、そして複数のゲノムによる 相互作用まで、遺伝子の変異は生殖的隔離と 種分化を起こす可能性があります。