分子軌道図は 構成する原子軌道の 相対的なエネルギーを 左右に示し その結果として 得られる分子軌道を 中央に示したものです 原子軌道と同様に 各分子軌道には 反対のスピンを持つ電子が 最大2個まで入ることができます 重なり合った原子軌道の電子は フントの法則に従い 必要に応じてエネルギーの 低い方から高い方へと 分子軌道に配置されます 例えば 水素分子の2つの電子は 両方とも低エネルギーの シグマ-1s結合分子軌道に あります 分子軌道理論では 結合軌道の電子数から 反結合軌道の 電子数を引いたものを 2で割った分子の 結合次数から 共有結合の安定性を 予測しています 結合次数が ゼロより大きい場合は 1つ以上の共有結合が 存在しうることを示し 結合次数がゼロの場合は 結合が存在してはならないことを 意味します 分子状の水素は 結合次数が1であり 水素同士の間には 単結合が存在します しかし 共有結合している ジヘリウムは 結合次数がゼロであるため 存在しません 分子軌道図は 化学結合に対する 価電子の寄与が コア電子の寄与よりも大きいため 一般的に価電子軌道のみを 含みます 例えば ダイリチウムにおける 1s-1sのオーバーラップは 分子の結合秩序への 正味の寄与はありません シグマ-2s結合分子軌道の 価電子は その結合次数を1に しています 第2周期の二原子分子は 2sおよび2p原子軌道の両方を 考慮する必要があります 2pの原子軌道は 2sの原子軌道よりも エネルギーが高いので 対応する分子軌道も 同じ傾向をたどります 原子軌道間の 重なりの大きさによって 分子軌道の安定性の 度合いが決まります したがって 2p-2pの 横方向の重なりから 形成されたπ軌道は典型的には 2p-2pの端から端までの 重なりから形成されたシグマ 軌道の間に核間軸に沿って存在します しかし 二原子性の ホウ素 炭素 窒素で発生する 2sと2pの軌道の混合 のような効果は シグマ2p軌道の方が π2pよりも エネルギーが高いという 異なる状態をもたらします 水素化リチウムのような 異核二原子分子では より電子陰性な原子ほど 低いエネルギーの 原子軌道を持つことになります その結果 結合分子軌道のエネルギーは 電子陰性度の高い 原子軌道に近くなり 反結合分子軌道のエネルギーは 電子陰性度の低い原子軌道に 近くなります 分子軌道理論はベンゼンのような 多原子分子にも有用です ベンゼンのルイスモデルでは その非局在化電子を正確に 表現することができませんが 分子軌道理論では それらの電子を炭素環全体を覆う 3つのπ結合分子軌道に 割り当てることができます