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Biology II: Mouse, Zebrafish, and Chick

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マウスのジェノタイピング

Summary

Overview

ヒトゲノムマップの作成開始から既に10年以上が経過していますが、全てのヒト遺伝子の機能が解明されるまでにはまだまだ時間がかかります。遺伝子機能を調べる一つの方法として、その遺伝子配列を欠損させ、その変化(表現型)が動物の生体に与える影響を評価することができます。そのために一般的にヒト遺伝子と高い類似性を持つマウス(Mus musculus)が用いられます。何世代にも渡ってマウスの遺伝子変化を追跡するために必須となるのが、各マウスのDNAをスクリーニングするためのジェノタイピングと呼ばれるテクニックです。

このビデオでは、マウスのジェノタイピングの概念とその手順について解説しています。最初にホモ接合体、ヘテロ接合体、野生型、突然変異体、トランスジェニックなどの用語を含むマウスの遺伝学の基本を説明しています。次に、マウス組織からゲノムDNAを抽出し精製するための工程やジェノタイピング結果の読み取り方、さらに目的遺伝子型の追跡方法も紹介しています。そして最後に、ジェノタイピングがマウス研究の必須テクニックとなっている理由をアプリケーション例と共に学ぶことができます。

Procedure

ジェノタイピングとは、特定のDNA配列の存在の有無を確認するためのテクニックです。遺伝子はマウスの表現型を反映するので、遺伝子構造つまり”ジェノタイプ”を調べることでそのマウスの特徴を知ることができます。このビデオでは、マウスの遺伝学、ジェノタイピングの方法、PCR法を用いたジェノタイピング結果の読み取り方などを紹介していきます。

マウスのジェノタイピングを利用する目的を理解するために、マウスの遺伝子がどのように操作されるのか見ていきましょう。

遺伝子について調べるために、遺伝子配列を改変し機能不全を誘導する方法があります。マウスは2倍体細胞で構成されており、どの遺伝子も2コピーずつ存在します。予め調べたい表現型を1コピーだけ欠損させたマウスを交配させることで、両方の遺伝子が欠損した仔を誕生させることができます。

この遺伝子型は、ホモ接合体ノックアウト又は単にノックアウトと呼ばれます。2コピーとも機能している正常マウスは、ホモ接合体ワイルドタイプ又は野生型と呼ばれます。そして、1コピーのみが機能しているマウスは、ヘテロ接合体又は単にヘテロと呼ばれます。

遺伝子を取り除く他にも、マウスゲノムにDNA配列を導入する方法があります。この挿入するためのDNA断片はトランスジーンと呼ばれ、トランスジーンが導入されたマウスがトランスジェニックです。最も一般的なトランスジーンは、緑色蛍光タンパク質、GFPであり、クラゲから単離されます。組織特異的プロモーターを利用してGFPを発現させ、その緑色の蛍光により簡単に細胞を確認することができます。

遺伝子の変化がGFPのように識別しやすい表現型ではないことがあります。その場合はジェノタイピングを行い実験に用いるマウスを決定します。ジェノタイピング開始前に、マウスにラベルをつけ、後からでも識別できるようにしておきます。もっと長く使えるラベルを選びましょう。一般的なのは、耳に切り込みを入れ、その位置と数により識別する方法です。

次に、少量の組織、通常尻尾を2-5mmカミソリの刃かハサミで切断し、そこからDNAを抽出します。複数のマウスから組織を採取する場合は、刃に印をつけ、同じ部分で切断しないようにして下さい。サンプルに別のサンプルが混入しないようにします。

組織から遺伝物質を分離するために、プロテイナーゼK酵素溶液中でサンプルを処理します。そのまま一晩置いたサンプルを遠心分離機にかけ、毛などの不要物質を除去します。溶解物からDNAを単離するには、アルコールを加え核酸を沈殿させる方法が効率的です。短時間のインキュベーション後に再度遠心分離を行いペレット状のDNAを採取します。

70%エタノールで過剰な塩を洗った後にペレット状のDNAを水又はバッファー中で再懸濁させたらジェノタイピングの準備完了です。

特定のDNA配列の存在の有無を確認するための様々な方法があります。その多くの第一段階はポリメラーゼ連鎖反応、PCRによる目的遺伝子領域の増幅です。PCR法についてのより詳細な解説はJoVEサイエンスエジュケーションPCR法編をご覧下さい。

遺伝子型解析法の一つに、PCR増幅断片のサイズの変化を検出する方法があります。ここに700塩基対を挿入したマウスがいたとします。PCR後、野生型のバンドは200塩基対に、トランスジェニックは900塩基対に検出されます。

反応生成物をアガロースゲル上で分離させ、目的断片のサイズを推定します。野生型コントロールのバンドは200塩基対のみに、トランスジェニックコントロールは900塩基対のみに、そしてヘテロはどちらのバンドも検出されるはずです。“no template”コントロールは余分なDNAが混入していないことを確認するためのものなので、何も検出されていません。

コントロールを確認できたら、未知の表現型解析を始めていきましょう。マウス1と2は野生型のバンドのみ検出されているため、ホモ接合体ワイルドタイプであることが分かります。マウス4と6はトランスジーンバンドのみなので、ホモ接合体トランスジェニックです。そしてどちらのバンドも検出されたマウス3と5はヘテロということになります。

マウスの耳の切り込みと識別番号を照らし合わせ目的の表現型マウスを見つけ出して下さい。

表現型とその解析法について学んだところでこれを利用した研究例を見ていきましょう。

目的の表現型を得るために、より複雑な遺伝子改変が求められるケースがあります。マウス皮膚がんモデル作製には2つのトランスジーンが必要です。 1つはがん遺伝子を誘導する、もしくは発がん性の遺伝子です。もう1つはCreリコンビナーゼと呼ばれる酵素です。皮膚細胞でのみ発現しがん遺伝子の転移を防ぐ配列を切断することで発ガンを促します。これら両方をもつマウスを誕生させるためにヘテロマウス同士を交配させます。その後ジェノタイピングを実施し遺伝子型を確認して下さい。

時には、実験前にマウスの遺伝子型を決定できない場合があります。例えば、胎仔の心拍の研究を行う場合、心拍に影響を与えることなくジェノタイピング用の組織を採取することはほぼ不可能です。そんなときは、母親の体内での胎仔の位置を慎重に印をつけてから超音波測定を行います。そして最後に尻尾から遺伝子型を決定し心拍への影響を調べます。

このビデオではDNA抽出法を1つだけ紹介しましたが、多様なバリエーションがあります。ダイレクトPCRシステムでは5分以内での組織消化が求められます。そして未分解物質を下に落としたら、上清を用いてそのままPCRができ、DNA精製の手間を省くことができます。

ここまでマウスのジェノタイピングについてご覧いただきました。このビデオでは、マウス遺伝学の基本とDNAサンプルの準備•解析方法、そしてこのテクニックの応用例を紹介しました。ご覧いただきありがとうございました。

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