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Biology II: Mouse, Zebrafish, and Chick

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ゼブラフィッシュの生殖と発生

Summary

Overview

ゼブラフィッシュ(Danio rerio)は、遺伝学や発生生物学の研究にとってなくてはならないモデル生物となりました。初期発生過程のゼブラフィッシュ胚は透明なので、組織形態形成を細胞レベルで観察することができます。さらに、ゼブラフィッシュは遺伝子操作が容易であり、ヒト遺伝子と類似した脊椎動物として発生過程の遺伝子の役割を調べることができます。

このビデオでは、ゼブラフィッシュの発生の主要ステージの概要を特に受精後24時間(hpf)に焦点を当てて説明しています。生活環は、単一細胞の受精卵(接合体)つまり卵黄の大きな玉の上に割球がのっている状態のものから始まります。その後、数時間もしないうちに割球が分裂して多数の細胞をもつ胚になり、エピボリー運動と呼ばれる大きな細胞移動、そして原腸陥入が起こります。たったの1日で多数の細胞がどのように協調し、心臓が鼓動するまでに至るのかを解説しています。その後の孵化期には、幼生が泳ぎだし摂食行動を始めます。そこでは、幼生の飼育をするための特別な設備などの重要事項を説明しています。最後に、胚発生の研究に利用される一般的なテクニックを紹介し、ゼブラフィッシュがヒトの発生や疾患の解明にどう貢献しているのかを知ることができます。

Procedure

ゼブラフィッシュ胚は発生生物学のモデルとして多くの学者に好まれる特徴があります。短時間で体外発生し、しかも透明なため観察が容易に行えます。さらに、物理的処理、遺伝子操作等に適しており、発生シグナルをコントロールし同定することが可能です。このビデオでは、ゼブラフィッシュの生活環、初期の胚発生過程、飼育方法、ゼブラフィッシュ胚発生の利点を活かしたテクニックについて紹介していきます。

まずは、ゼブラフィッシュ発生の基本を見てみましょう。

ゼブラフィッシュの生活環は、大きく 胚、幼生、稚魚、成魚 の4つに分かれています。 受精卵から成魚になるまでのサイクルはたったの90日です。

胚の初期発生は28℃の環境で速やかに進行します。 各ステージは受精後の時間数又は日数で表します。通常hpf又はdpfと表記されます。しかしながら、培養温度が高い、あるいは低い場合は形態学的な特徴で判断する必要が出てきます。最初の24時間は以下の5段階に分けることができます。受精卵、卵割期、胞胚期、原腸胚期、分割期です。続いて咽頭胚期に入り、24時間後胚が孵化して幼生になります。

ゼブラフィッシュの主な発生段階について学んだところで、最初の24時間をもっと詳しく見ていきましょう。

ゼブラフィッシュの生活環は受精卵から始まります。受精卵は重要な構造を持っており、胚は卵膜と呼ばれる保護膜で覆われ、卵黄は自力でエサを採れるようになるまでの胚発生の栄養源となります。受精直後、細胞質が卵の側面に移動し、胚盤と呼ばれる単一細胞が増殖します。

卵割期に、胚盤は分離し、割球が形成されます。この過程は急速に進行し、細胞の成長を伴わない同調細胞分裂が行われます。

分裂が迅速に進行できるのは、母親由来のRNAが既に卵に与えられており、RNA合成過程を省いて割球内でタンパク質を合成することができるためです。胞胚期に入ると、胚自身がRNAを合成し始め、細胞周期を延長していきます。またこの時期に、細胞が卵黄に覆いかぶさっていくエピボリー運動が始まります。

卵黄がおおよそ半分覆われたところで原腸胚期に突入します。この時期は、原腸陥入と呼ばれ細胞が内側にまくれ込んでいきます。その結果、胚葉と呼ばれる3つの異なる層、内胚葉、中胚葉、外胚葉ができあがります。この3層はそれぞれ異なる運命を決定づけられています。外胚葉は表皮や神経系、内胚葉は消化管、中胚葉は筋肉や骨、血管へと分化していきます。

受精後12時間までに、中胚葉が分化し体幹に沿って体節を形成し始め、最後には筋肉になります。体節の数によってこの分割期の段階を明確にできますが、ほんの10時間でそれ以上に多くのことが進行していきます。受精後24時間までに、胚は活性化され、心臓が鼓動し始めます。

1日で大きな進歩を遂げた胚ですが、まだ仕事は終わっていません。胚は卵膜中で発生を続け、受精後約3日で孵化し幼生となります。卵黄内の栄養源を急速に消耗しながら、幼生体内にはすぐに浮袋のような特殊な構造が形成されます。器官がガスを含んでおり浮力が得られます。受精後7日を過ぎると、稚魚が飛び出し、エサを探し始めます。

魚を育てる準備はできていますか。稚魚を育てるための養成所が必要になります。最初は幼生を水がほとんど入っていない水槽に 入れ、泳げるようになってきたら水を足していきます。水で戻したドライフードと微生物、例えばゾウリムシなどを組み合わせたエサを使用することで、成長を促すことができます。そして、 2、3ヶ月で大人へと成長し、生活環を完了します。

ゼブラフィッシュの発生について見てきました。ここからは発生研究のテクニックについて見ていきましょう。

ゼブラフィッシュ胚は小さく透明であるため、RNA in situハイブリダイゼーション法に利用されます。このテクニックは、目的のmRNAに相補的なRNA分子を標識し、生体全体の遺伝子発現を可視化する方法です。時間経過に従った遺伝子発現の変動や特定臓器の変化を観察でき、発生過程の洞察に役立ちます。

また、体外で発生するゼブラフィッシュ胚は細胞移植にも適しています。初期胚を蛍光標識した細胞を標識していない宿主胚に移植し、追跡調査を行います。この方法により、細胞相互作用が臓器の機能に与える影響やin vivoでの細胞の動きを観察できます。

さらに、ゼブラフィッシュ胚はマイクロインジェクション法による遺伝子操作が容易であり、特定遺伝子の機能を1細胞期から調べることができます。例えば、ゼブラフィッシュにアンチセンスオリゴヌクレオチドであるモルフォリノをインジェクションすることでタンパク質の発現を抑制できます。その魚を利用して、血管形成の変異など複雑な発生過程における遺伝子の役割を明らかにすることができます。

ここまでゼブラフィッシュの発生についてご覧いただきました。このビデオでは、ゼブラフィッシュの生活環を初期の発生段階から学習し、発生生物学研究でのゼブラフィッシュの活躍ぶりを紹介してきました。ご覧いただきありがとうございました。

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