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32.4:

遺伝的浮動

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Genetic Drift

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進化について よくある誤解に、進化には自然選択が必要である、というものがあります。しかしながら、これはすべての進化に 当てはまるわけではありません。遺伝的浮動は、自然選択の作用なしに 進化を起こすメカニズムの一つです。遺伝的浮動は、偶然によって起きる 集団内における対立遺伝子頻度の 変化と定義されます。これがどういうことなのか、キリンの個体群を例として 見てみましょう。この例では、黄褐色と 茶色の対立遺伝子を それぞれの色が付いた ビー玉で表します。初めの段階では、どちらの色も同じ数のビー玉が 存在していると想定します。この集団から オスとメスを交配させて 次の世代を 産み出すため、1ペアあたり4個の 対立遺伝子を 選択します。交配するペアを ランダムに選択すると、同じ色のビー玉が2個ずつと なる場合もありますが、確率的に、ペアの中には すべて同じ色のビー玉を持つペアや、3個同じ色で1個だけ違う色の ビー玉を持つペアも現れます。このような確率偏差が すべての交配で起きるため、次世代における それぞれの対立遺伝子の 数は、前の世代とは 異なります。このように、時間とともに 対立遺伝子頻度が変化することを 遺伝的浮動と言います。遺伝的浮動の中には、対立遺伝子頻度を 大きく変化させるものがあります。ボトルネック効果と ファウンダー効果は そのような大規模な 遺伝的浮動の代表例です。ボトルネック効果は 集団の個体数が 1世代またはそれ以上に渡って、大きく減少した場合に起きます。ビー玉の入った瓶を 想像してみてください。色の異なるビー玉は、それぞれ異なる 対立遺伝子を表しています。瓶をひっくり返すと ボトルネック効果によって ビー玉が数個だけランダムに出てきます。この出てきたビー玉の 集まりは、生き残った 個体群を表しています。生き残った個体群と 初めの個体群では、含まれる 遺伝子の比率が異なります。新しい世代では、遺伝的多様性が 大きく失われています。これが、大規模な遺伝的浮動です。自然災害や 乱獲などのイベントが このようなボトルネック効果の 原因となります。十分な個体数がいる 大きな集団は、多様性を大きく失うことなく、そのようなイベントに耐えることができます。一方で、小さな集団では、何世代にも渡って混乱が続く場合や、崩壊してしまう場合もあります。大規模な遺伝的浮動の 2つ目の例である ファウンダー効果は、集団の一部が 元の集団から分離し、隔離されて新たな 創始者集団」を つくるときに起きる効果です。ボトルネック効果と類似した 結果が起きます。新しくできた個体群では 遺伝的多様性が 失われるため、元の個体群とは含まれる 遺伝子の比率が異なります。つまり、低温の環境では 熱を吸収する 能力の高い、メラニンの多い テントウムシがより多く 生き残るように、環境に適した特性が 選択されることで 対立遺伝子頻度が 変化する 適応遺伝とは異なり、遺伝的浮動では 確率的変化によって 進化が引き起こされます。例えば、壊滅的なイベントや 移住などによって 個体数がランダムに 減った場合に このような進化が起きます。

32.4:

遺伝的浮動

最もよく知られている進化のメカニズムである自然淘汰は、生存や繁殖に有利な形質を増やします。しかし、進化は単に有利な形質を伝播させるだけでなく、常に集団に利益をもたらすものでもありません。

人生は公平ではありません。野原でのんびりと草を食べていた鹿が、雷に打たれて悲劇的に食事を終えてしまうことがあります。その鹿が集団の中に3頭しかいない場合、集団の遺伝子プールの1/3が失われることになります。このようなランダムな出来事は、時には何世代にもわたって集団に影響を与えることがあります。このような進化のメカニズムを「遺伝的浮動」と呼びます。

遺伝的浮動とは、偶然の出来事による集団の対立遺伝子の頻度の変化です。対立遺伝子とは、遺伝子の変異体のことで、その頻度とは、その対立遺伝子を持つ集団の割合のことです。遺伝的浮動は、有利な対立遺伝子、中立な対立遺伝子、有害な対立遺伝子の頻度を同様に変化させます。

遺伝的浮動は、十分に大きな集団には劇的な影響を与えません。これは、遺伝的浮動が単独で起こるのではなく、自然選択などの他の進化のメカニズムとともに起こるためです。大規模な集団では、多くの個体が失われても、残った遺伝子プールは自然淘汰が働くのに十分な多様性を持ちます。

しかしながら、小さな集団では、遺伝的浮動によって遺伝子の多様性が急激に低下し、標本誤差が発生します。標本(サンプリング)誤差は、あるサンプルがそのサンプルが所属する母集団を代表していない場合に起こります。ある集団の一部が消滅した場合、残ったメンバーは元の集団の遺伝的多様性のほんの一部しか表していない可能性があります。大きなサンプルの場合、一般的に代表性が高いので、科学者は実験においてサンプルサイズを最大化します。

遺伝的浮動の2つの極端な例は、自然災害などの破滅的な出来事によって引き起こされるボトルネック効果と、入植によって生じる創始者効果です。どちらの場合も、大きな集団から小さな集団になると、標本誤差が生じ、それが進化につながり、時には不利な形質になることもあります。

Suggested Reading

Andrews, C. A. (2010) Natural Selection, Genetic Drift, and Gene Flow Do Not Act in Isolation in Natural Populations. Nature Education Knowledge. 3(10):5. [Source]

Pray, L. (2008) Genetic drift: bottleneck effect and the case of the bearded vulture. Nature Education. 1(1):61. [Source]