Caenorhabditis elegansの発生と生殖

Biology I
 

Summary

Ceanorhabditis elegansは、どのように生物が一つの細胞から多くの複雑な相互作用をもつ機能的組織に成長していくのか解明するための有益なツールとなります。C. elegansの初期の研究では、完全な細胞系譜と電子顕微鏡レベルでの構造解析が行われ、遺伝子、発生、疾患のつながりについて新規発見を可能としました。C. elegansの既に解明されている発生、生殖プログラムを理解することは、この生物モデルを最大限に研究応用するために必要不可欠です。

このビデオでは、生殖から孵化(ふか)するまでの線虫の発生について簡潔に説明し、孵化したばかりの幼虫が生殖能力をもつ成虫になるまでのライフステージを紹介しています。また、胚発生の過程でどのように主要な軸の決定が成されるのか、各創始細胞がどの組織を形成していくのか、また4段階の幼虫期の識別方法について説明しています。最後に、遺伝的交雑のセットアップ方法を学び、このC. elegansの発生と生殖を利用した研究応用例をいくつか紹介しています。

Cite this Video

JoVE Science Education Database. モデル生物I: 出芽酵母、ショウジョウバエ、C. elegans. Caenorhabditis elegansの発生と生殖. JoVE, Cambridge, MA, (2017).

シノラブダイティス・エレガンスは、解剖学的に小さく、遺伝学的に単純で、決まった発生パターンをもつ多細胞生物です。 脊椎動物のような生物の方が、多種にわたる発生プログラムをもつにも関わらず、線虫の発生、生殖の研究は、私たちを含む様々な生物の発生制御を解明するために重要な手掛かりとなっています。 線虫の発生と生活環をよく理解することは、遺伝実験のために不可欠となります。

まず、線虫発生の鍵となる部分を見ていきましょう。 受精における最初のイベントは、非対称な細胞分裂です。これにより前後軸が決定されます。 背腹軸は、2細胞期から4細胞期、左右軸は4細胞期の少し後に決定されます。

初めの5回の細胞分裂により6つの創始細胞を形成します。 それらは、AB、MS、E、C、D、P4です。 全ての線虫で、同じ創始細胞から同じ特異組織が形成されます。 ABの子孫細胞は、最終的に神経、咽頭組織を形成します。 MSは筋肉、咽頭、神経を形成します。 E由来の細胞は、腸組織になります。 Cは筋肉、神経、表皮を形成します。 D由来の細胞は体壁筋になります。 そして、P4は、生殖細胞を形成します。

細胞間相互作用は、細胞運命にとって重要です。 例えば、ABpとP2は神経と上皮細胞を形成する重要な役割をします。 ABaとEMSとの相互作用は、咽頭細胞形成のために必要です。 4細胞期の後ろ側のEMSとP2の相互作用により、EMS由来のE細胞は分化し腸管細胞になります。

その数回の初期分裂に引き続き、胚が約30細胞期に達すると、産卵し始めます。 更に細胞分裂は続き、細胞数は増加し、器官が形成されます。 その後ついに、卵殻内で小さな線虫が動き始め、その少し後、咽頭も動き出し卵がふ化します。

アポトーシス、つまりある細胞を選択的に排除するプログラム細胞死は、Cエレガンス発生の上で重要となります。 胚発生期には、アポトーシスが起こった結果、113個の細胞が死んでしまいます。

胚発生について学んだところで、次はふ化したばかりの線虫の生活環について見ていきましょう。 Cエレガンスの生活環は、4段階の幼虫期、L1、L2、L3、L4、それに続く成虫期で構成されます。 エサ不足など、ある環境条件下では、後期L1もしくはL2幼虫期に発生をやめ、替わりに耐性幼虫期に入ります。 耐性幼虫は、長期間そのままで過ごすことができますが、環境が好転すると、通常の発生プログラムに戻ります。

線虫は、自己生殖可能な雌雄同体と雄の2つの性別をもっています。 雌雄同体は、先のとがった尾をもち、同齢のオスよりも大きく長いです。 解剖顕微鏡下で、そのスリムな体から簡単に雄を見分けることができますが、最も大きな違いは、交尾器がついた独特の尾にあります。

雌雄同体の生殖系は、卵母細胞と精子の両方を、一方雄は精子のみを作り出します。 生殖系は、遠位端に幹細胞をもっており、成熟した配偶子を作りだすため、近位端に移動します。

自己生殖により、遺伝学上同一の2つの性染色体をもつ雌雄同体の子孫を残します。 時々、雌雄同体生殖系で染色体の分離が失敗することがあり、1つの性染色体しかもたない雄が生まれてきます。 高温になると、不分離が起こりやすくなります。

有性生殖は、遺伝的多様性を生み出します。 自然界のCエレガンスは、交配をあまり行わず、自己生殖を主要な生殖方法としています。 しかしなぜ、進化の過程で雄の存在が保存されてきたのかはまだ分かっていません。

Cエレガンスの発生と生活環について学んだところで、それを遺伝的交雑に応用していきましょう。 まずは、遺伝学的戦略をしっかり立てることが大切です。

バクテリアやカビのコンタミネーションを防ぐために無菌操作が重要になります。 線虫は乾燥に弱いためプレートを乾燥させないようにします。 交配当日に、培地の中心にバクテリアを濃いめに播種したプレートを準備します。 株の名前日付を培地にラベルします。 交配させるために、3匹のL4幼虫又は若い成虫の雌雄同体と、12匹のL4又は若い成虫の雄を各培地にのせます。 適切な温度でインキュベートし、4日後にプレートを確認します。 交配が成功していたら、雄が約50%出現します。 まだどの雄とも交配していないL4雌雄同体の子孫を、取り出します。 それらを観察し、予想される表現型と一致しているかを確かめます。

Cエレガンスの生活環と発生を知ることで、細胞生物学上の問題解決を図ることができます。

生殖系のアポトーシスは、ヒトを含む多くの生物の卵形成、胚発生に不可欠です。 多くのアポトーシス制御因子はヒトと線虫の間で保存されています。 なので、様々な種で、卵形成中にたくさんの性細胞死が起こる理由の解明のためにも、線虫が利用されています。

Cエレガンスでは、良性幹細胞だけが、遠位端の生殖系列幹細胞になります。 これらは、どのように幹細胞の生態的地位が維持され、どうやって分化が決定されるのかの理解の枠組みとなります。

幼虫からヒトに感染する寄生線虫の多くは、Cエレガンスの耐性幼虫と似たような形態をとります。 そして感染すると、発生を再開します。 この寄生線虫により、たくさんの農作物が侵されます。 耐性幼虫のメカニズムのさらなる追求は、寄生虫感染の治療につながります。

今回のJoVE、Cエレガンスの発生と生殖入門編では、胚の発生、細胞運命の特定、Cエレガンスの生活環、について学びました。 この分野の研究は、アポトーシス、幹細胞、感染性線虫のメカニズムの解明につながっていきます。 ご覧いただきありがとうございました。

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