ニワトリの発生

Biology II

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Summary

ニワトリ(Gallus gallus domesticus)の胚は、経済的で利用しやすい発生生物学研究のためのモデル生物です。ニワトリ胚の発生は素早く進行し、遺伝子操作や物理的処置にも適しており、細胞内分子レベルで発生のメカニズムを研究することができます。

このビデオでは、最初にメンドリの生殖器官での卵の受精や形成のプロセス、ニワトリ胚の発生段階の指標となるHamburger Hamiltonの発生ステージ表などを紹介しています。そして、原腸陥入と呼ばれるダイナミックな細胞移動により三胚葉(外胚葉、中胚葉、内胚葉)が形成される過程など発生の主なプロセスを概説しています。この三胚葉から器官など全ての組織が作られていきます。胚体外膜もそのうちの一つであり、卵殻中で消費されるガスや栄養を供給する重要な役割を担っています。そして最後に、ニワトリ発生研究に利用される素晴らしいテクニックの詳細を紹介しています。

Cite this Video

JoVE Science Education Database. モデル生物II: マウス、ゼブラフィッシュ、ニワトリ. ニワトリの発生. JoVE, Cambridge, MA, (2017).

何世紀にもわたるニワトリを利用した発生学研究により脊椎動物の発生に関する理解は大きく進展しました。ニワトリは世界中で飼育されているので、簡単かつ低コストでその胚を入手できます。さらに、親鳥の体外で胚発生が進むため物理的処置や遺伝子操作に適しており、発生プロセスの詳細を調べることが可能となります。これから、ニワトリの生殖、鶏卵の構造、胚発生の基本とこの発生システムを活用して行う実験テクニックを紹介していきます。

胚発生の前にまずは卵を形成する重要な構造について学びましょう。

ニワトリのメス、つまりメンドリは、交尾行動に関係なくほぼ毎日産卵します。その特性により私達の食卓を華やかにしてくれているのです。

24時間かけて作られていく卵のスタート地点は卵管中の卵子です。この細胞は卵黄膜に覆われた栄養豊富な卵黄で構成されます。メンドリが交尾を行った場合は、この段階で受精が起こり、胚盤と呼ばれる卵黄の表面のごく限られた部分で細胞分裂が開始されます。卵が卵管を下っていくとアルブミンの層つまり水とタンパク質で構成される卵白が形成され、卵黄を保護しさらに栄養源にもなります。次に、バクテリアから保護するためにケラチンを含む卵殻膜が形成されます。その後、子宮内で炭酸カルシウムから成る半透明の殻が出来上がり、卵は守られ、ガスと水分の交換が可能になります。

ニワトリの内部で何が起こっているのか少し学んだところで、産卵後のステップを見ていきましょう。

既に開始されている発生ですが、卵が外部の冷たい空気にさらされると一旦停止します。再開させるには37.5℃で保温します。一般的にニワトリ胚の発生段階は、HamburgerとHamiltonの発生ステージ表を使って形態学的に評価します。

産卵されたばかりの卵がHamburger Hamiltonステージ1に相当します。この時点では、胚を形成する細胞は、 透明の「明域」と呼ばれる部分つまり胚盤葉の中心部分に存在しています。次のステップでは、原始線条と呼ばれる胚の正中線を介した細胞移動が見られます。明域に存在する細胞は線条にできた溝を通って移動し、胚葉と呼ばれる3つの層を形成します。

最初に線条を通過した細胞は内胚葉を形成し、のちに消化管内膜や気管になります。それよりも後に通過した細胞は中胚葉を形成し、筋肉や血管になります。そして表面に留まった細胞によって外胚葉が形成され、その後表皮や神経組織となります。

この過程は原腸陥入と呼ばれ、ヘンゼン結節という原始線条の前端に位置する細胞塊から始まります。この構造を別の胚へと移植すると、二次胚が形成されるため、胚軸決定における原始結節の重要な役割の解明につながります。

さらに、二次胚の遺伝子発現の解析により、後に脳や脊髄を形成する神経管などの神経組織への誘導に結節が深く関わっていることが明らかになっています。

後期の胚発生は、血管が卵黄を放射状に複雑に取り巻いていくのが特徴です。血液循環は、 急速に胚が成長する際の栄養供給に必要不可欠です。そして、より複雑な胚発生を行うために、血管をもつ胚体外膜が必要になります。中でも 主に卵黄嚢が栄養供給に関わっており、 尿膜と漿膜は呼吸と排泄に対し重要な役割を担っています。7日後には、この2枚の膜の癒合(ゆごう)により漿尿膜又はCAMが形成されます。このおかげで、外部とのガス交換が可能となり、さらに殻は胚のカルシウム源となります。

この輸送システムは約21日間胚発生のために利用され、そしてカルシウムが殻からなくなったとき雛鳥が殻を破り孵化します。

ニワトリの発生の鍵となるステップを学んだところで、このプロセスを研究にどう応用できるのか見ていきましょう。

ヘンゼン結節を別の胚に移植する実験により、単離組織の発生に関する機能を評価できます。これを発展させたものが、ウズラなど他の鳥類の組織をニワトリ胚に移植するテクニックです。この研究では、ウズラ特異的マーカーを利用して移植細胞を容易に追跡できるため、顎形成(がくけいせい)などの発生プロセスへの影響を評価できます。

ダイナミックな遺伝子発現パターンにより発生過程を通じて興味深い形質転換が誘導されます。発生過程をより深く知るために、RNA in situハイブリダイゼーション法により、胚全体の遺伝子発現を可視化します。そのために胚の収集、固定そしてRNAプローブを加えて培養し目的のmRNAと結合させる必要があります。標識プローブから検出されたシグナルが強ければ目的遺伝子が強く発現していることを示します。

初期のニワトリ胚の神経構造の形成については学びましたが、複雑な脊椎動物の神経系はどうやって作られるのでしょうか?神経網について研究を行う手段として神経トレーシング法があります。目的のニューロンに染色液を注入し、軸索を通じて拡散させます。胚を固定し薄くスライスしたら免疫染色を行います。脳組織のマーカーで染色することで、神経のネットワークを観察することができます。

ここまでニワトリの発生についてご覧いただきました。このビデオでは、ニワトリの卵が形成される過程と胚発生の重要なプロセス、そして形質転換の研究などの基本的な実験テクニックを紹介しました。

ご覧いただきありがとうございました。

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