実験用マウスの発生と繁殖

Biology II

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Summary

実験用マウス(Mus musculus)を繁殖させることは、マウスの高い生産性を確立し維持するために不可欠です。そしてマウス胚は発生プロセスの解明のための研究に頻繁に利用されます。マウス胚の遺伝子発現を操作するための様々なテクニックが開発されており、ヒト遺伝性疾患の研究に貢献しています。

このビデオでは、マウスの繁殖と発生について学ぶことができます。発生過程を定義するための用語や主要な発生ステージについて解説しています。最初に、子宮内での発生イベントや初期胚特有の構造について紹介し、次に出生後の仔マウスの離乳プロセスや母マウスから離す時期などの飼育方法を説明しています。また繁殖をコントロールするためにオスとメスを別々のケージに移す時期や性別の判別方法、さらに胚発生のタイミング調整に有用な交尾後の膣栓の確認などの繁殖方法を紹介しています。最後に、マウスの発生を制御する複雑なプロセス解明のための研究戦略や遺伝子を操作し作製する”ノックアウト”マウスについて解説しています。

Cite this Video

JoVE Science Education Database. モデル生物II: マウス、ゼブラフィッシュ、ニワトリ. 実験用マウスの発生と繁殖. JoVE, Cambridge, MA, (2017).

マウスは素晴らしいモデル生物であり、ヒトの発生や疾患の解明に貢献し続けています。マウスは哺乳類の中でも繁殖力が高く発生も早いため、短期間でたくさんの匹数を揃えることが可能です。

子宮内で発生する胚は特別な構造を持っており、その研究はヒト発生の解明に役立ちます。このビデオでは、マウスの繁殖と各発生ステージの解説、そして繁殖のさせ方やそれらが研究へどう応用できるのか紹介していきます。

最初にマウスの繁殖について知っておきましょう。ヒトと同様、マウスの初期胚は体内で発生が進み、母親の子宮角で妊娠が成立します。しかしながら、私達とは違ってマウスは同時に多くの子を妊娠することができ、その平均は1度に10匹から12匹です。

マウスの発生について学ぶ前に、発生段階の呼び方を紹介しておきます。最も一般的なのは、受精後、胎生0日又はE0からスタートし、その後出生日まで受精後の日数で各ステージを定義づける方法です。生まれた後は出生後0日又はP0から再スタートします。

同じお腹の中の胚同士でも発生タイミングは多少異なってきます。そこでTheilerステージングのような形態学に基づいたステージング方法も使用されます。

次は、最初の数週までに観察されるマウス胚発生の形態学的な変化について詳しく見ていきましょう。

卵母細胞が受精すると、胚の活動がゆっくりと始まり、最初の3日目までに4回の細胞分裂が行われます。それから胎生4日目まで分裂を繰り返した細胞は再編成され、空洞をもつ胚盤胞と呼ばれる細胞になります。この胚盤胞のうち、多能性幹細胞からなる内部細胞塊又はICMが、後に胚の本体となります。残りは栄養外胚葉と呼ばれる細胞で、後に胎盤を形成し胎仔に酸素と栄養を供給します。

その後、マウスの発生は少し複雑になります。ほとんどの哺乳類の胚を形成する細胞は円盤状の構造をしています。しかしマウスの場合はカップ形の構造をしているのです。カップの外側の細胞層は内胚葉と呼ばれ、後に消化管などの深部組織を形成します。また、紛らわしいですが内側の細胞は外胚葉と呼ばれ、後に毛髪や表皮などの体の表面の組織となります。

この層が反転した状態は胎生8日目頃まで続き、その後くるりと向きが変わります。この時点までに、その他にも重要な構造ができあがります。例えば体節は、将来骨格筋へと分化する構造で、 肢芽(しが)は前肢や後肢となる構造です。

その後の発生は素早く進み、 胎生12日目までには主要器官である肺や消化管などができあがってきます。そして、胎仔が母親の体外でも生存可能となるのは、妊娠後たったの19日から21日です。

子宮内での発生プロセスの後は、生後の話を見ていきましょう。小さく毛のないマウスの赤ちゃんは目を閉じたまま生まれてきます。

生まれて最初の数週間は、メスのマウスの母乳から栄養をもらいます。その後、生まれて3週間ほどで離乳します。このときが母親から離して別のケージに移すタイミングです。

繁殖をコントロールするために、この時点からオスとメスを別々に飼育します。性別を判別するには、肛門と生殖器の距離を確認します。この距離はオスよりもメスの方が短いのが特徴です。

仔マウス用に床敷を敷いたケージを準備します。慣れるまでは、ペレット状のエサを水で柔らかくしたり、ウェットタイプのエサを入れた皿を置いてあげたり、また水もあげるようにして下さい。

マウスが性成熟するのは、離乳後数週間であり、生後2ヶ月から9ヶ月が繁殖に適した時期です。

次は繁殖方法について見ていきましょう。 マウスの行動はサーカディアンリズムに大きく影響されることを覚えておいて下さい。夜行性であるマウスは夜に繁殖行動を行います。

またフェロモンも大変重要です。まずはオスとメスが仲良くなる機会を与えてあげましょう。できる限り多くの仔マウスを誕生させるために、オス1匹に対しメスを4匹まで組み合わせます。

胚発生のタイミングを調整するために、翌朝メスのマウスの膣栓を確認します。これは交尾を行った印です。マウスには4〜5日に1度排卵が起こるため、もしそのとき膣栓が確認できなくてもそのままにして次のチャンスを待ちましょう。メスが妊娠していることを確認できたら、ケージからオスを取り出し、生まれてくるマウスの脅威とならないようにします。

哺乳類の胚発生を制御する複雑なプロセスを研究するための素晴らしいテクニックが開発されています。いくつかの例をみてみましょう。

細胞を標識し、どのように発生し器官形成されるのか追跡することで、予定運命図を作成することができます。

これは、蛍光タンパク質の発現によりごく一部の細胞に色が着いたもので、胎仔と大人マウスの脳に発現した細胞の役割を調べることができます。

発生過程における特定遺伝子の役割を解明するために、その遺伝子を過剰発現させることがあります。それには子宮内エレクトロポレーション法というテクニックを利用します。DNAを組織に微量注入し、その後電流をかけて胚細胞内に導入します。その結果特定の細胞内に遺伝子を発現させることができます。ここでは、胚の中の中枢神経系に赤色蛍光タンパク質を発現させています。

遺伝子の一部を欠損させたノックアウトマウスを作製することで、永久的に遺伝子発現をコントロールすることができます。まずは初期胚から幹細胞を単離し、ゲノム改変を行います。改変細胞を胚盤胞内に移植したら今度はメスのマウスに移植し妊娠させます。そして誕生した正常細胞とノックダウン細胞を併せ持つキメラマウスを掛け合わせることで、ホモ接合体ノックアウトマウスを作製できます。

ここまで、マウスの繁殖と発生についてご覧いただきました。このビデオでは、マウスの繁殖と胎生期、出生後の発生について、さらにマウスの繁殖方法や素晴らしいマウス発生の研究例を紹介しました。ご覧いただきありがとうございました。

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