電気生理学: パッチクランプ法

Neuroscience

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Summary

ニューロンの細胞膜に存在するイオンチャネルは、細胞内外での電荷の移動を制御しニューロンの発火を調整しています。イオンチャネルの生物物理学的特性を調べるための非常に有用なテクニックがパッチクランプ記録法です。ガラスマイクロピペットを細胞に密着させ吸引することで高い抵抗シールを形成できます。このプロセスを通して単一もしくは複数のチャネルをもつ細胞膜から小さな「パッチ」を単離します。それから電極を使って細胞膜を「クランプ」し電気的性質をコントロールします。この操作はチャネル活性の解析に重要になります。また電極を使うことで、細胞膜に印加された電圧や細胞膜上のイオンの流れを記録することができます。

このビデオでは、電気生理学的手法であるパッチクランプ法の原理と必須となる器具をはじめ、様々なパッチクランプ法: ホールセル法、セルアタッチ法、穿孔パッチ法、インサイド-アウト法、アウトサイド-アウト法、について解説しています。次に、典型的なホールセルパッチクランプ法の主要ステップを紹介し、その中で電流-電圧曲線又はIVカーブについても解説しています。そして最後にイオンチャネルパッチクランプ記録法のアプリケーション例を紹介しています。今日研究されているイオンチャネルの生物物理学的特性、細胞興奮性、神経刺激物質についての評価方法を知ることができます。

Cite this Video

JoVE Science Education Database. 神経科学のエッセンシャル. 電気生理学: パッチクランプ法. JoVE, Cambridge, MA, (2017).

パッチクランプ記録法はニューロンの活性化を制御するイオンチャネルを研究するための非常に有用なテクニックです。

ガラスマイクロピペットを細胞に押しあて、単一もしくは複数のチャネルをもつ細胞膜の一部を単離します。これを「パッチ」と呼びます。

さらに、そのパッチ部分を電気的環境に固定すなわち「クランプ」し細胞膜に電圧をかけ測定します。イオンチャネルの存在が膜へのイオン流入に関与し、複雑な機能をもつイオンチャネルの研究が可能となります。

このビデオでは、パッチクランプ法の原理と実験に必須となるステップ、そしてこのテクニックの応用例を紹介していきます。

はじめに、パッチクランプ記録法の原理を学んでおきましょう。

ニューロンの内部と外部では陽イオン、陰イオンの数が異なります。

この不均衡な状態が電圧差、つまり膜電位を生み出します。 -70mVとは、細胞内が細胞外に対し負の電位であることを表しています。

イオンチャネルは、細胞膜を通過するイオンの動きつまり電流をコントロールし勾配を維持します。

パッチクランプ法を利用することで、電位や電流の特性について明らかにできます。

ガラスマイクロピペットにイオン溶液を充填し、接続された塩化銀電極で電圧と電流を測定します。

マイクロピペット先端は滑らかで開口しており、微小な細胞膜を密着させることができます。

電極内液のイオンによるバックグラウンドを除去するために、抵抗の高いシールをピペットと細胞膜の間に形成させます。シール抵抗はギガ単位であるため、ギガオームシールと呼ばれます。

ピペット電極は増幅器に接続されており、細胞膜に存在するチャネルを流れる微小な電流や電圧の変化を増幅して測定することができます。

また増幅器を利用することで、膜電位を特定の電圧に維持することができます。

増幅器は銀電極を流れる電流量を調節し、電圧を一定に保ちます。

特定の電圧で開口する電位依存性イオンチャネルは複数存在するため、測定電流の統計データを使ってチャネルの開口を解析します。

代わりに、一定の電流を電極に流し電位の変化を記録して利用することもできます。

これにより「電流固定」による活動電位を記録することができます。

ここからは主なパッチクランプ法を5種類紹介していきます。

1つ目はセルアタッチ法です。単純にマイクロピペットを細胞膜に密着させて測定します。

2つ目はホールセル法です。マイクロピペットで膜に穴を開ける手法であり、細胞内へのアクセスが可能となります。

3つ目は穿孔パッチ法です。マイクロピペットに充填した抗生物質などの化学薬品により細胞膜に小さな穴をあけることで細胞質基質にアクセスできます。

4つ目はインサイド-アウト法です。マイクロピペットを使ってシールをつくり、素早く引き上げ細胞膜を切り離します。すると膜の内側が細胞外液中に露出した状態となります。

この方法を使うと、細胞質側のチャネルに様々な化学的処理を加えることができます。

最後は、アウトサイド-アウト法です。インサイド-アウト法と類似していますが、こちらはホールセル法の状態からマイクロピペットを先端のシールが凸状になるまでゆっくりと引っ張ります。

この方法では、細胞外面のチャネルに実験処置を施すことができます。

パッチクランプ法の原理を学んだところで、次は実際に実験を進める際の必須ステップを確認しましょう。

ホウケイ酸ガラスチューブをピペットプラーで引き伸ばしマイクロピペットを作製します。

次に、先端熱加工を行い最適な先端径と抵抗になるよう調整します。

加工できたら、マイクロピペットにイオン溶液を充填し軽くたたいて気泡を全て除去してください。

次にマイクロピペットをスライドさせ電極をホルダーに装着します。

装着できたらシリンジを使ってピペットを陽圧にし、余分な液体の侵入を防ぎます。

準備が整ったら、標的細胞又は組織を顕微鏡にセットし、観察しながらマイクロピペットを細胞に近づけていきます。

増幅器を使ってテスト電圧パルスをかけ抵抗値を記録します。 この値は細胞に触れると増加します。

ギガオームシール形成のために、シリンジを使って陽圧から陰圧へとゆっくりと移行させます。

抵抗が急激に増加し1ギガオームを超えるとシールが形成されます。

ここまでのステップでセルアタッチ法は確立されました。ここからホールセル法へと発展させていきましょう。

ホールセル法は細胞膜に穴を開けて実施します。

マイクロピペット内を陰圧にすることで穿孔します。

膜が破れると、テストパルス波形に大きな一過性の波形が現れます。これは細胞膜がコンデンサとして働くためでありテストパルスによって荷電されたことを示します。

ニューロン中に存在する単一イオンチャネルの特性は、他のチャネルをブロックすることで薬理学的に確認します。

電圧ステッププロトコルを用いることで様々な保持電位に段階的に電圧を加え誘発される電流を調べることができます。

電流-電圧曲線又はIVカーブは電圧依存性イオンチャネルを流れる電流量を示し、どの電圧でチャネルが開閉するかを読み取ることができます。

ここからは、実際にこのテクニックがどのように適用されているのか見ていきましょう。

ニューロン中のイオンチャネルの研究は非細胞性環境で実施されることがあります。

ここではイオンチャネルタンパク質を人工的な脂質膜に添加し、チャネルについての研究が進められています。

例えば唐辛子に含まれるカプサイシンのような分子の暴露を受けたときのチャネル活性への影響を調べることができます。

イオンチャネルは細胞外環境にさらされているため、薬剤で刺激できるすばらしい標的となります。

試験化合物をマイクロピペット又は溶液に加えることで、パッチクランプ法により薬の効果を直接記録できます。この方法で例えばニコチンの神経作用が明らかになります 。

陰圧にし高い抵抗シールを形成するという原理は、ハイスループットシステムに応用されています。薬剤スクリーニングのために多数の細胞を同時に測定することができるアプリケーションです。

ホールセルパッチクランプ法により、刺激に対する単一細胞の反応を調べることができます。

さらに、同時記録を用いることで、筋肉など標的となる組織を刺激したときのニューロンの発火を研究することができます。

ここではホールセル法を使って運動ニューロンの発火を誘発しそれを制御する筋繊維を同時に測定しています。神経興奮と筋活動が明らかな関連が見られます。

ここまでパッチクランプ記録法についてご覧いただきました。このビデオでは原理とテクニック、そして実験の手順を紹介しました。

パッチクランプ法は電圧と電流の変化を明確にとらえることができるテクニックであるため、チャネル及びニューロンの生物物理学的解明に貢献し続けることでしょう。

ご覧いただきありがとうございました。

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