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Biology I: yeast, Drosophila and C. elegans

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C. elegansにおけるRNA干渉入門

Overview

RNA干渉 (RNAi) は、二本差RNA (dsRNA) を生物内に導入し、ターゲット遺伝子をノックダウンするために広く用いられる技術です。C. elegansにおけるRNAiは、標的遺伝子に相補となる二本差RNAを発現させたバクテリアを線虫に摂食させるだけで簡単にかつ効率良く実施できます。このビデオではまずRNA干渉の概念とターゲット遺伝子のノックダウン方法を紹介しています。そして、バクテリアとRNAi線虫プレートの準備方法、線虫の培養方法、RNAiの評価方法を含め、C. elegansのRNAi実験をプロトコルに準じて説明しています。それから、RNAiを利用した逆遺伝子スクリーニングを紹介しています。逆遺伝子スクリーニングは、遺伝子がどのような生物学的役割を担っているかを明らかにするために頻繁に使用されるテクニックです。さらには、コンピューターを用いた逆遺伝子スクリーニングにより、大量の遺伝子サンプルを効率的にノックダウンし解析することが可能です。また、RNAiはC. elegansの発生研究にも頻繁に利用されています。RNAiはその発見以来、多くの生物学的現象の解明に大きく貢献しているのです。

Procedure

RNA干渉又はRNAiは、生物へ二本鎖RNAを導入し、標的遺伝子のサイレンシングを誘導する方法です。 これはノーベル賞を受賞した研究成果であり、遺伝子機能特定のために、C.エレガンスのどの遺伝子の発現も抑制できます。 線虫がエサとする大腸菌に、標的二本鎖RNAを発現させ、培地を作製し、C.エレガンスにRNAiを誘発させます。 4齢幼虫期の線虫を培地に移し、産卵させます。 目的の発生段階で、その子孫を収集し、表現型を解析します。 RNAiは、逆遺伝子スクリーニングや 高速大量スクリーニング (HTS)、さらに発生過程の研究に利用されます。 このビデオでは、 RNA干渉の概念 とCエレガンスを用いた実験方法、そして生物学的過程のより深い理解のためにどう利用できるかについて見ていきます。

それではRNAiの働きについて見て行きましょう。 まずは、抑制したい遺伝子に対して相補となる二本鎖RNAをコードしたプラスミドをもつバクテリアを 準備します。 ご存じの通り、C.エレガンスはその形質転換したバクテリアを食べます。 詳細なメカニズムは知られていませんが、その後すぐに二本鎖RNAがC.エレガンスの体内に入ります。

一度体内に入ると、酵素であるDicerで二本鎖RNAが切断され、21から23の塩基対をもつ低分子のsiRNAが作られます。 次に、そのsiRNAはRISCと呼ばれる複合体をつくり、一本差になります。 その複合体は標的mRNAと結合し、相補となる塩基対を作ります。 これによりmRNAは分解され、遺伝子のノックダウンが可能になります。

まず初めに、対象となる二本鎖RNAを保有したバクテリアを準備します。 一般に 二本鎖RNAをコードしたプラスミドもつ 数千種類のバクテリアが、購入可能です。 もし見つからない場合は、標的となる遺伝子配列をプラスミドに導入しクローニングします。 プラスミドはアンピシリン耐性遺伝子を含み、そのプラスミドをもつバクテリアのコロニーを選択的に集めることができます。

次に、対象となる二本鎖RNAをコードしたプラスミドをDE3大腸菌株に取り込ませ形質転換していきます。 また、コントロールとして、何もコードしていないプラスミドを使用します。 この大腸菌株のRNAポリメラーゼⅢの量は少なく、二本鎖RNAが合成されにくいという特徴をもちます。 さらに、T7 DNAポリメラーゼを活性化するIPTG誘導遺伝子をもっており、プラスミドの二本鎖RNAを転写できます。 そして最後に、RNAポリメラーゼⅢの発現を維持し、不要なバクテリアの増殖を抑制するために、テトラサイクリンとカルベニシリンに耐性です。

形質転換したバクテリアHT115(DE3)をテトラサイクリン12.5㎍/ml、カルベニシリン25㎍/ml含有のLB寒天培地に播種します。 37℃で一晩インキュベートすると翌朝にはコロニーが出現します。 そして、プラスミドをもつバクテリアを選別するために、アンピシリン100㎍/ml含有LBブロスにそのシングルコロニーを加えます。 37℃で一晩、撹拌しながらインキュベートします。 その後、5mlのアンピシリン100㎍/ml含有LBブロスを加え、さらに37℃で4から6時間インキュベートします。

バクテリアが準備できたら、RNAi線虫プレートを準備し、摂食させます。 プレートの中身は、寒天、水、カルベニシリン、線虫 メディウム混合物、そしてバクテリア中のT7DNAポリメラーゼを活性するIPTGです。 バクテリア培養物0.5mlをプレートに加え、37℃で一晩インキュベートすると、菌叢(きんそう)が形成されます。

線虫をRNAiプレートに加えるときには、同じ発生段階のものを用います。 それにより、どんな表現型の違いも発生段階によるものではないと言えます。 発生段階を揃える工程では、まず白金ピックをバーナーで滅菌します。

そのピックを用い、L4幼虫をRNAiプレートに加え、20度で一晩インキュベートし、若い成虫を育てます。 次に、その成虫を新しいRNAiプレートに移し、産卵の間、20℃で6から8時間インキュベートします。 その後成虫を取り除いたら、同じ発生段階の卵を獲得できます。 そして、分析目的の発生段階に達するまで、プレートで培養します。

線虫を 観察するために、4%寒天パッドを用いてスライドを作成します。 まず、2枚のスライドガラスにラベリングテープを貼り付け、寒天パッドの厚みを均一にするためのスペーサーを作成します。 2つのスぺーサーの間に新しいスライドをはさみ、その上に4%の融解させた寒天を150µlのせます。 素早くさらなるスライドガラスを直角にのせカバーします。 スライドを優しく離すと、寒天パッドが片方のスライドに接着します。

次に、動物の動きを抑えるためにアジ化ナトリウムなどの麻酔薬10µlを寒天パッドに加えます。 白金ピックを使って、線虫をその寒天パッドに移し、カバーガラスをかけます。 そして、顕微鏡で観察します。(B’) RNAi遺伝子をノックダウンした線虫をコントロールと比較し、サイズ、発生段階、形態、蛍光標識タンパク質の局在パターン、表現型の違いなどを記録します。

RNA干渉の最も重要な応用法の一つは、逆遺伝子スクリーニングです。 逆遺伝子スクリーニングとは、既知の遺伝子集合体をノックダウンし、表現型を評価することで、遺伝子機能を特定化する方法です。 線虫のほぼ全ての遺伝子情報に対応する二本鎖RNAを発現したバクテリアのライブラリーを使用できます。 バクテリアをマルチウェルプレートで培養し、線虫に摂食させます。 そうすることで、多数の遺伝子のRNAiノックダウンによる表現型への関連を調べることができ、正常な遺伝子機能を洞察できます。

オートメーション化遺伝子スクリーニングは、逆遺伝子スクリーニングの一種であり、非常に高い処理能力をもちます。 この遺伝子スクリーニングでは、何千ものバクテリアクローンのロボット処理と特殊な定量分析法により、Cエレガンスのゲノム全般を簡単にノックダウンできます。

例えば、抗菌ペプチド遺伝子、 nlp 29の遺伝子組み換え蛍光レポーターを発現させた線虫に、バクテリアを摂食させ、 RNAiにより何千もの遺伝子をノックダウンすることができます。 同時に、線虫を真菌胞子に暴露させ、真菌に対する抗菌ペプチドの反応を評価できます。

Cエレガンスの発生の研究にもRNAiが適用されています。 目的の遺伝子(又は遺伝子集合体)をノックダウンし、その遺伝子が実際にどのように発生プロセスや発育タイミングに影響するのかの評価にも、RNAiが利用できます。 RNAiを利用したノックダウンにより、発育を遅延させる遺伝子や器官発生に関わる遺伝子が明らかになるでしょう。

今回のJoVE、CエレガンスにおけるRNA干渉導入編では、RNA干渉の概要、 Cエレガンスのバクテリア摂食による RNAiの応用法について学びました。 RNA干渉は、高速大量スクリーニングを含む、逆遺伝子スクリーニングのための重要なツールであり、発生学のためにも有益な手法です。 ご覧いただいありがとうございました。

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