原子価結合法は 量子力学モデルの 原子軌道が どのように重なり合って 共有結合を生成するかを 理解するために 用いられる手法の一つです この理論では原子間の相互作用が システムの全体的なエネルギーを 低下させるときに結合が 形成されると仮定しています 水素分子の形成を 考えてみましょう 各原子は1s軌道に 1個の電子を持っています 離れているときには 水素原子はお互いに 引きつけ合うことも 反発することもなく 系のエネルギーはゼロであると 考えられます 原子がお互いに近づくにつれて 各電子は他の原子の 原子核の引力を受けます 同時に 電子は原子核と同様に お互いに反発します もし 引力が反発よりも強ければ 原子同士が近づくにつれて 系のエネルギーは 減少します 電子と電子の反発と 原子核と原子核の反発が 電子と原子核の間の最適な 力のバランスをとるときに ポテンシャルエネルギーの 最小値に到達します 水素分子の場合 結合長が 74ピコメートルの場合に エネルギーは最小となります このとき 2つの水素1s軌道の 実質的な重なりが生じ 共有結合を形成します 反対のスピンを持つ2つの電子は 両方の原子核に引き寄せられ 両方の原子軌道が共有する 空間に分布します 核間距離をさらに縮めると 主に原子核間の 静電的反発によって エネルギーが上昇し始めます 価数結合理論では 球状の s軌道以外の原子軌道も含めて 部分的に満たされた原子軌道が 重なり合うことで化学結合が 生じると考えられています フッ化水素では 水素からの 半充填された1s軌道と 半充填されたフッ素の2p軌道は 相互作用することができます p軌道は核間軸に沿って存在し 水素のs軌道と重なり合って 結合を形成します 2つの非球面軌道の間に 単一の結合が形成されると 2つの軌道は頭から頭への 重なりを持つことになります フッ素分子の共有結合は 2つの半充填された p軌道の重なりから形成され 最大の重なりと より強い結合に寄与します 原子軌道の頭から頭への重なり によって形成されるタイプの 共有結合は シグマ結合と呼ばれています